Sの場合―神秘の国でロングジャンプ!
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Sの場合―神秘の国でロングジャンプ! さあ、それではまいりましょう。 栄えある第2回目の今日は、高校時代からの友人Sを紹介しよう。 今回は彼のジャンプバカぶりを、皆さんと一緒にたたえてみたい。
Sは高校時代から陸上部に所属し、幅跳びを専門にしていた。 足も速く、確か高3の時、50mを6秒7で走っていた。
なぜ覚えているかというと、かく言う私も足の速さには自信があり、同じく高3の時に6秒7で走っていたからである。 足が速いと必然的に幅跳びも遠くへ跳べる。当然私も幅跳びは得意であり、常にトップクラスであった。
そんな私が体育の時間、絶好調で空中2歩半を披露し5m30を跳んだ事があった。 高校男子とはいえ5mジャンパーはそうはいない。クラスに2・3人だ。しかも30センチ。ずば抜けている。
そんな時、首をかしげながら跳んでいる男がいた。Sである。 全く浮かない表情をしている。 これは、いくら幅跳びを専門にやっているとはいえ俺のジャンプにはかなわんだろう、そう思ってSに何メートル跳んだか聞いてみた。するとSは首をかしげながらこう言った。
「・・・・ん〜、6メートル。」
おいおい!調子悪くて6mかい! しかし彼はその日、くやしさのあまり一晩中眠れなかったという。
そんな彼と私は6年後、ひょんな事から一緒にインド旅行に行く事になった。 インドに着いて何日目だったか、ガンジス川の上流でボーっとしていると、高校生ぐらいのインド人たちに声をかけられた。一緒にクリケットをしないかと。 Sは相手の風貌のいかつさと人数の多さに恐れをなし、「やめとこ、絶対金せびられる」と私を止めたが、「クリケットしようなんて言う奴に悪い奴はいない!」と私が根拠のない自信をみせたので、渋々ついてくることになった。(結局何も悪い事はなかったのだが・・・)。
クリケットは野球に似ている。 中学の時に野球をやっていた私はすぐさまコツをつかみ、守備に攻撃にと活躍を始めた。
一方Sは、球技は大の苦手である。 モタモタする彼に対し、一人のインド人が言った。
「What can you do?」(お前は何ができるんだ?)
そこでS、しばらく考えた後、満面の笑顔でしかもちょっぴり首を右にかしげながらこう答えた。
「ロングジャンプ!」
そして砂の上にふみきり線を描き、思いっきり助走距離をとって、跳んだのである。 存分に手を広げて、むん!と跳んだのである。インド人の前で。
あっけにとられるインド人。 勝ち誇った顔のS。
やがて次々にインド人がまねして跳び始めたが、誰もSほど跳べない。 いくら神秘の国とはいえ、ジャンプバカを越える事はできないのである。
恐るべきジャンプバカ。というよりバカジャンプ。
その後、私も「跳んでみろ」と何回も言われたが、結局跳ばなかった。 もちろんSに花を持たせる意味もあったが、もしここで私もすごい距離を跳んでしまったらインド人の間で「日本人=ジャンプバカ」という誤った認識が広まってしまうだろう。 それを恐れたのである。
しかし、彼のジャンプはまさに、インド人もビックリであった。
さぁ、そんな彼を偉人伝に加えよう。奴の名はS。 The Man of Legend!
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