6. ストリート・チルドレンの笑顔


アジアではどこでもそうかもしれないが、町を歩いていると必ず物乞いやストリートチルドレンに出くわす。カンボジアのシェムリアップでもそんな人たちを多数見た。

何か物を売りつけてこようとする子供もたくさんいる。そしてその商品と言えば、どうにもこうにも欲しいとは思えないような品質の飾りや人形だったり、全く目新しくないただの風船だったりする。

薄汚れ、穴の開いた服、もちろん裸足。手足や顔までどろどろに汚した状態で近づいてきて、日本語で「これ買う!安い!」と突進してくる。

もちろん買ってあげることはない。ほとんどの観光客を含め、現地の大人たちにも「あっちへ行け!」と追い払われるか、完全に無視される。もちろん家が貧しいからこういうことをしているわけで、何1つ売れることなく家に帰れば、往々にして何もしていない(もしくはアル中やヤク中の)父親にドヤされるだろう。いや、親がいればまだいいほうかもしれない。

愛想良くふるまう賢そうな子もいれば、ひたすら呪文のように売り文句を唱え、半泣きで付いてくるだけの子もいる。
カンボジアのシェムリアップにおいては、こういう物売り子たちは無視していればいい。見たり、目を合わしたりしなければ、たいていすぐに離れていく(インドではこうはいかない)。

この気弱さというか、目を合わさないと近づいてこないというところに、カンボジア人の優しい気質を感じてしまうのは私だけだろうか。

このシェムリアップでの旅行中、あまりにも邪険に扱われる子供達を見ていて思った。もし、周りに大量に子供がいなくて、ガイドも他のカンボジア人もいないような状況で物売りの子が近づいてきたら、その子の「名前」だけは聞いてあげようと。毎日野良犬のように扱われていても、やはり人間なのだから名前ぐらい聞いてあげてもいいだろう。

まぁそんな状況はないだろうし、あったとすればひとけのないところだから、相手が子供とはいえ逃げたほうがいいかもしれないが・・・。

ところがそんな瞬間が来たのである。トイレに行こうとガイドさんと離れた時に、1人の女の子がついてきた。

英語で名前を聞いてみると、ニンマリと笑って教えてくれた。そして「And you?」と英語で返してきた。

どこで英語を覚えたのかは知らないが、この会話をしているときはやたらと目を輝かせ、一生懸命話そうとする。追い払われているときの顔とは全く別物だ。そして、明らかに商売のことは忘れてしまっている。単純だ。

このときのこの子の笑顔は忘れられない。
だからといって何ができるわけでもない。結局、彼女が売っているヒビの入った、アンコール・トムの形をしたマグネットを1ドルで買ってあげた。
ここからがまたカンボジア人気質なのか、この子の性格なのかは分からないが、もう一つ売ろうとすればいいのにしないのである。「バイバイ」と、ただ笑顔で帰っていった。

この国もベトナムやインドのように発展し、さらには日本のようになっていくのであろうか。その時、あのアンコールワットはまだ威厳を放って立っているのだろうか。

必ずしも「発展」がいいこととは限らないが、こう言えるのも発展した社会に住んでいるからかもしれない。

可哀想だとか助けたいとかは思わないが、せめて、あの物売りしかやっていない子供達が学校のようなものにでも行ければいいなぁ、などと思う今日この頃である。

どうやったら行けるのかは分からない。頑張れカンボジア政府。

こうしてインドシナの旅はあっという間に終わった。メインはまぎれもなくアンコールワットだったが、少なからず触れたベトナムやカンボジアの人々の朗らかさ、そして料理のうまさ(?)にも感銘を受けた。これからこのような国々がどうなっていくのか、ちょこちょこ気にしておきたい、てな感じである。

以上、Road to Indochina、これにて終了。
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