Drama


1つ目のカテゴリーは、「ドラマ」である。もちろんどの作品にもドラマはあるのだが、日常にどこにでもいそうで、しかしなかなかスポットライトが当たらないような人を主人公にした作品群のことである。

社交的で人づきあいがうまく、常に前向きで、目標を立ててゴリゴリと進んでいく人が勝ち組になれる世の中かもしれないが、その裏で、世渡りが下手で不器用だったり、人知れず悲しみを抱えている人だっているはず。そんな、「いい人」なのに「No.1」にも「Only one」にもなりきれない人たちにスポットを当て、その姿を悲哀と少しの笑いを込めて表現しようとした作品群である。

だからといって、「そのままでいいよ」とか、「上昇志向なんていらないよ」なんていうつもりは毛頭ない。「それでも前へ進んで行かなくては!」 と、自分なりのエールを込めて作っているつもりである。

このカテゴリーの作品を、今回と次回で2本ずつ紹介する。

まずは「風船」という作品。これは自分で作った初めてのマイム作品である。
満員電車に揺られるサラリーマン。電車を降りてからももみくちゃにされた彼は、何かがプツンと切れてしまったのか、ふと会社とは違う方向に歩きだし、公園へと向かう…、というところからストーリーが始まる。

誰にでも何かがツラい時はある。逃げ出したい時もある。しかし、そうなったのは誰かのせいではなく、自分の至らなさが原因だったりする。目の前にある大きな壁。それを越えられるなんて想像すらできない。そんな時、ふと楽しかった時のことを思い出したりする。あの頃は良かった、こうなるはずじゃなかったのに…。しかし、そうやって逃げられるのも束の間、どんなにひ弱でも、どんなに負け戦となろうとも、永遠と続くかにも思えるそのツラさに立ち向かっていかざるを得ない。とりあえず、今日だけはがんばってみよう。できれば、明日もがんばってみよう…、そんな思いで作った作品である。

今まで何度も上演している作品であり、今後も上演することがあると思われる。

このカテゴリーの2つ目の作品は、「シアワセ」である。
通常、作品を作る時は、ああでもない、こうでもないとひたすら考える。ようやく形ができてきたとしても、細かい点の修正が絶えず必要で、こう動くと意図が伝わらない、ああ動くと誤解を招く、などとひたすら延々と繰り返す。
しかしこの作品は、マイムの先生と練習しているときに、「10分あげるから、短い作品を作ってみなさい」と言われ、すぐにひらめいて文字通り10分で作ってしまったものである。その形からほぼ変わらずに毎回上演している。

これもまたサラリーマンが主人公。仕事を終えて夜中に帰ってきた彼を待っているのは、寝静まった妻と幼い子供、そして台所に置いてある冷え切った晩御飯。そんな彼に、ほんの小さな、しかし驚くような出来事が!? …という流れである。

よくよく考えてみると、この小さな出来事も悲哀を助長するようなことかもしれない。この作品を作った頃、「『哀しみ』という小道をひたすら歩きながら、『喜び』という小石を見つけるのが人生である」という言葉が常に頭のどこかにあった。その言葉と、この時のヒラメキがうまくつながってできたような作品である。先ほどの「風船」よりは大いに救われる作品であり、公演の一番最後の演目として上演することが多い。

次回もこのカテゴリーの作品を2本紹介する。