海の向こうに地下鉄で渡る


香港島へは地下鉄で行ける。地下鉄に乗っているうちに、いつの間にか海を渡っている。

地下鉄を出て香港島を歩いていると、自分たちが泊まっているエリアより道が狭くてごちゃついている感じがする。坂道も多い。

少し歩くと、建物の壁に美しいアートが描かれているエリアに出た。ごちゃついてはいるが、写真で切り取ればとてもオシャレな街並み。いわゆるインスタ映えのスポットであり、多くの若者が写真を撮りに訪れている。ごちゃごちゃとアートが入り混じっているところがなかなか面白い。

今回、この香港島で行ってみたい場所の1つはヒルサイドエスカレーターだ。ウォン・カーウァイ監督の映画『恋する惑星』で有名になった場所である。あのときにあった周りのビルなどは解体されたり、新しくなったりしているらしいが、エスカレーターはまだあるらしいので行ってみることにした。

とてつもなく長いエスカレーターなので、すぐに見つかると思ったのだがなかなか場所が分からない。ウロウロしていると、そのエスカレーターらしきものがビルの合間に見えた。でもどこから入ればいいのか分からない。行きすぎたり戻ったりしてやっとエスカレーターに乗れた。

確かに周りの景色は映画の通りではないが、あの映画のあのシーンの場所にいると思うと感慨深い。巷では映画のロケ地を巡る旅を聖地巡礼などと言っているようだが、風景が変わってしまった後のロケ地を見てみるのも面白いかもしれない(少し物悲しいけど)。公開から25年経ってもこうやって来る人がいるなんて(自分のことだが)、やっぱり映画の力はすごいと実感。

この日はとても暑くて、途中、喫茶店で中国茶を飲んだりした。香りも楽しみながら飲むお茶はとても贅沢な時間だ。この喫茶店でも小籠包などを食べられるようだったが、今日のお昼はとてもおいしいと評判のお店に行くことにしていた。さぁ、暑いけどそこまで歩いて行こう!

4月末とはいえ、途中の道のりは暑くて大変だったが、高層ビルが立ち並ぶ中に突然お寺があったりと、いかにも香港な街並みを楽しみながら、その店「蓮香居」に20分ほど歩いて到着した。

お店に入るといきなり数人もの店員がワーっと寄ってきて、これを食べろ、あれを食べるか、これはおいしいぞ、もうとにかくテーブルに置くか!とばかりに猛然と料理を勧められた。

ちょっと待って、えーっとこれと、これと、それからこれ!それはいらない!と、こちらも負けじとアピール。食べたいと思っていた肉まん、大根もちを食べることができた。そして衝撃的においしかったのがマーラーカオ!やさしくてほんのり甘い。店員の強引さからは全く想像できない、繊細な味。やっぱり中華はすばらしい。どれを食べてもおいしいうえに、大量に食べても胃もたれしない。食べるのが好きな人にとって香港は最高である。

おいしいおいしいと食べていると、その強引な店員のうちの1人のおばさんが自分たちのテーブルに近づいてきて、こちらの持っている香港のガイドブックを指さして何かしゃべっている。この店が載っているページを開けろと言っているようだ。そのページを開けて、ここですよと見せると、んー?この店の紹介として載っている写真、そこに写っているおばさんがこの話しかけてきたおばさんにそっくりである。するとおばさん、満面の笑顔で「これ私」と言っている(多分)。本を手にしたおばさんは「ちょっとこれ、他の人に見せていい?」と言いながら(多分)、他の店員さんにその写真を見せて回っていた。一通り見せて帰ってきたおばさんの顔はとてもご満悦だった。。

なぜかそのおばさんと一緒に写真を撮り、お店を出ていった。おいしくて満腹。大満足で、店のすぐ近くにあった駅からトラムに乗り、地下鉄に乗り換えて、今度は前々回紹介した「粵劇」の学校に行ってみることにした。劇場もあるらしい。ひょっとしたら粵劇を見たりできないかな、そんな情報はないけど、と思いながら、地下鉄で香港島から出ていった。
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やっぱり100万ドルの…
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粵劇って長いのね