4. 一生に一度はアンコール


カンボジアはシェムリアップに向かった。ここにはあの有名な、アンコール・ワットが鎮座しているのである!
それだけではない。ここは9〜15世紀にアンコール王朝が栄えていたこともあり、アンコール・ワット以外にもさまざまな建築物や遺跡が残っている。アンコール・トムやタ・プロム、ロリュオス遺跡群などなどだ。

我々は3日間かけて、アンコールワット遺跡群から少し離れたバンテアイ・スレイまで見て回った。そのすべてをここで書くことはしないが、やはりアンコール・ワットについては触れておかなければならないだろう。

一言で言えば、衝撃である。
アンコール王朝が衰退し、その後はジャングルの中に埋もれていたというが、これを再発見した人の驚きは計り知れない。体中の穴という穴から液体がダダ漏れになったのではないだろうか。国旗に描かれるほどの存在であることがよく分かった。

道を車で走っていると、突如として現れる異様な空間。塔や塀のゴツゴツとした石の猛々しいさま。それに反して、見事に均整のとれた左右対称の配置。あの伝説的な写真家、一ノ瀬泰造も思わず吸い込まれていったという美しい光景だ。ここに宿る大きな歴史と、地元の人々の誇り。そういうものすべてを一挙に感じることができる建造物である。

これを見てしまうと、正直、貧困にあえいでいるこの国の実情からすれば王朝時代のほうがよっぽど豊かで発展していたのではないだろうか、とさえ思える。こことその周辺にある遺跡群へは、旅行者は許可証がないと入れないことになっている。そうでなければ保存状態を保つことは難しいだろう。しかしそうであっても、これら遺跡群の一部は崩れ落ち、修復作業が欠かせない状態となってしまっている。これは皆さん、早めに行ってシカと見ておくべきですぞ!

アンコール・ワットを含むこれらの遺跡群は遠くから見ても衝撃を受けるが、近くに寄って見ればさらに驚くべき事実を発見する。
壁じゅうにレリーフが彫ってあるのだ!
それはヒンズーの神様や女神であったり、叙事詩であるラーマヤナを元にしたものであったり、あるいは当時勃発した戦争をモチーフにしたものだったりする。
戦争を描いたレリーフでは、服装や見た目によって、カンボジア側の兵隊だったり、中国側からの人間だったりというのが見て分かる。そして当時の生活をかいま見られるようなレリーフもある。何を食べていたのか、どうやって料理していたのか。興味は尽きないのである。

この遺跡群の周辺には検問所のようなところがあり、観光客がその中へ入るには入場料を支払い、許可証を首からぶら下げておかなくてはならない。あれだけの遺跡なのだから、あってしかるべきだろう。

その検問所のようなところを通ったあとには、ちょっとしたお楽しみもある。
象に乗れるのだ。これは観光用の象タクシーである。象の背中の部分に板が縛り付けてあり、そこに座れるようになっているのである。
まぁこんなところでしか乗る機会はないだろうと、私達はアンコール・トムに向かおうときにこの象に乗っかってみた。私達の乗った象はのらりくらりと歩くのん気なヤツで、次々と他の象に抜かれていったが、なかなかいい眺めだ。決して乗り心地がいいとは言えなかったが、象の頭の上に乗っかっている象使いのおじさんが日本の歌「ぞうさん」を草笛で吹いてくれたりと、素朴な時間を楽しめた。

まぁ象のことは置いといて、とにかくこの遺跡群は一見の価値がある。
そう断言できる、すばらしい遺跡群であった。
次回に続く・・・。
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