11. 金箔で太る仏像


その後、マンダレー随一の寺院、シュエナンドー寺院に行った。
大きな寺院だ。そして、ここでの我々の一大イベントはこれ!
仏像に金箔を貼ること!
2 cm四方ぐらいに切られた金箔を何枚か購入し、一段高いところに坐している大きな仏像にこの金箔を貼るのでございます!

我々と書きましたが間違いです。この仏像には女性は触れることができません。
よって男性であるわたくしだけが貼れるのでございます。
ミャンマーには女性が触れてはならぬ聖なるもの、なるものがあるらしい。
チャイティヨーという場所に、通商「ゴールデンロック」なるものがある。
これは、崖っぷちに落ちそうになっている岩のことで、その上に仏塔が建てられているのだが、
この聖なる岩にも女性は触れてはならないという。
もちろん、女性は僧侶に触れることもダメである。

仏像の前にはたくさんの人が座り、お祈りを捧げている。そこでヨメさんは待つことになった。
テッチョーさんに連れられ仏像のところへと上がっていき、ペタンと座った私はおもむろに金箔を取りだし、不器用に貼ってみた。腰が痛い人は、仏像の腰のあたりに貼ってあげれば自分の腰痛が治るという。

ぷっくりと恰幅のいいキンキラキンの仏像である。
他にも貼っている人がたくさんいる。ついでに後ろで待っている人もいる。
仏像をよく見てみると、首のところに何やら豪華なネックレスが何重にもぶらさがっている。
これらは全部、捧げものということらしい。そして誰も奪ったりはしないらしい。
貧しさよりも信仰心が勝っているようである。

貼り終えて立ち去ろうとすると、テッチョーさんが「後ろを向いて!」と言いだした。
「なんすか?」と思って後ろを振り返ると、遠くでカメラを構えているヨメさんが見えた。
え? 仏像の前で撮んの? みんなこっち見てお祈りしてんのに??
いやいやそれはやめたほうが…、と去ろうとすると、いつもはやさしいテッチョーさんにドーンと押され、元の場所に戻された。
仕方なくその場でフリーズ。ヨメさんの「OK」の合図でそそくさと去って行った。
みんなこっち見てるのにこっ恥ずかしい…。場をわきまえない観光客丸出しじゃないか(みんな分かってるとは思うけど)。

そして、その仏像が座っている台を降りていくと、何やら古ぼけた大きめの写真が飾ってあった。細身でくすんだ色の仏像の写真だった。
するとテッチョーさん、「これは、今金箔を貼った仏像の写真ですよ」と言う。
はいぃ? まったく似ても似つかない、別物の仏像じゃござんせんか!
「もう何年も前の姿です。今はああなってますけど」
要するに、造ったときは細くてみすぼらしい仏像だったのだが、毎日何人もの人が金箔を少しずつ少しずつ貼りつづけ、今のようなぷっくりと太ったキンキラの仏像になったというのである!

金箔で太る仏像。その金箔は、一般の人々が購入して貼るものである。
恐るべし信仰心。

テッチョーさん自身も仏教に篤い信仰を持っており、お坊さんが勉強する学校で3ヶ月間過ごしたこともあるらしい。
これは何もお坊さんになるためではなく、人生の一過程として教えの勉強や、瞑想、修行に取り組んだもので、死ぬまでに誰もがやりたいことの1つということらしい。また行く必要がでてきたときには行くかもしれないという。
苦悩が募ったり、人生を一新したいようなときに、頭を丸めて行くのだそうである。
「一緒に通ってみませんか? 3か月間。 いいですよ〜」と、冗談か本気か分からないテンションで何度も誘われた。
え〜い!こうなったらビルマの竪琴を地で行ってやるか!? と考えてはみたものの、実際のところ、言葉もわからないこの国で3カ月間はあまりにも厳しい。
修行はビルマ語と、伝統仏教(上座部仏教または南伝仏教といったりもする)の経典で使用されているパーリ語とやらで進められるらしい。
興味はあるけどちょっとねぇ。うん、厳しいさ。ちょいと厳しすぎるんだわさ。

その後、元々は王宮にあったものの、なぜか場所を移されたという寺院へと向かった。移された後に王宮は焼失してしまったため、偶然にも王宮にあった現物がそのまま残っている唯一の建造物となっているらしい。
かなり老朽化しているが、やはり壁には大量のレリーフが彫ってあり、王宮に立っていた時の豪華なたたずまいは容易に想像できる。木造で今は真っ黒になってしまっているが、非常に見ごたえがあった。

そこを出たところで、何やら地味ぃ〜なことをやっているおじさんがいた。
ポストカードに何やらインクをぶちまけ、手に持った何かでひょいひょいとなぞっているようである。
近づいて見てみると、絵を描いていた。
手に持っていたのはカッターの刃のようなものである。これで、ポストカードの上にこぼしたインクをひょいひょいとなぞっているだけで、いつの間にか家が描かれ、歩いている人が現れ、山や木々が生まれ、鳥まで飛び始めた。
そしてほんの1分で、ポストカードの裏に見事な「ミャンマーの田舎町」の絵が完成したのである!
これはスゴイ!

もうインクを固めてあるやつがあるから、一枚買わない? おみやげにいいよ! などとおじさんに言われ、一枚とは言わず2枚買ってしまった。これはすんばらしい特殊技術です!

そして夕方になり、イラワジ側のほとりへと連れて行ってもらった…。

次回、「イラワジ川のほとりで」に続く…。
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