沖縄の気になる琉球舞踊古典女七踊りPart.2


前回に続き、古典女七踊りについて書いていこう。

3つめは「かせかけ」(かしかき)
夫のために美しい着物を織りたい、という踊り。糸巻きに使う綛と枠を持って踊る。歌詞は次のようになっている。

七読と廿読 綛掛けて置きゆて
里が蜻蛉羽 御衣よすらね
(七読(ななゆみ)や廿読(はてん)の糸を糸巻きに掛け置き、愛しい貴方にとんぼの羽のような美しい着物を作ってあげたい)

枠の糸綛に 繰り返し返し
掛けて面影の 勝て立ちゅさ
(糸巻きの枠に繰り返し糸を巻き付けていくにつれて、貴方の面影が募るばかりです)

綛掛けて伽や ならぬものさらめ
繰り返し返し 思ど勝る
(糸巻きをしても貴方への思いは募るばかりでなぐさめにもなりません。返し返し糸巻きをするごとに思いは増します)

綛をくるくると回しながら踊るこの「かせかけ」は、琉球舞踊の中でも特に印象深い踊りである。とんぼの羽のような着物は庶民の着るものではなく、位の高い人が着るものだ。つまり、夫が出世してそのような着物を着る人になってもらいたい、という願いがこめられている。喜びに満ちた踊りでありながら、はかなさも感じる。これは昔の嫁いだ女性の閉塞感みたいなものを暗示しているのだろうか。人生は決して喜びだけ、または苦しみだけで成り立つものではない。そのような当たり前でありながらも忘れている真実を思い起こさせてくれるのである。

そして「柳」(やなじ)。
柳、牡丹、梅を持って踊る、人生訓のような踊りである。歌詞は次のようになっている。

飛び立ちゅる蝶 まづよ待て連れら
花の許我身や 知らんあもの
(飛び立つ蝶よ暫く待っておくれ、私はまだ花がたくさんあるというその場所を知らないのだから)

柳は緑 花は紅
人はただ情け 梅は匂い
(柳は緑、花(牡丹)は紅、人はただ情け、そして梅は香り)

花の入った籠を持って登場し、柳、牡丹、手踊り、梅の順に踊っていく。まずは人生の楽しさ、喜びを唄った後、柳の本領は緑、牡丹の素敵なところは紅色、人の良さはただ情けを尽くすところ、そして梅が優れているのは香り、という教訓歌をゆったりと踊る。小道具が多く、琉球舞踊の中でもとてもユニークな踊りである。

そして「作田」(ちくてん)。
扇を持って踊る、感謝を唄った夏の踊りである。歌詞は次のようになっている。

誰がしもてなちゃが 手になれし扇や
暑さすだましゅる たよりとなす
(誰が作ったのでしょうか。手に慣れ親しんでいる扇はどのような暑さもまぎらわし、涼しいたよりとする)

夏の日も 秋の情かゆはしゅる
手になれし扇の 風のしだしゃ
(夏の日も秋の涼しい情けを通わせて、手になじんでいる扇の風が心地よい)

沖縄の夏は暑くて長い。そんな夏に扇がもたらしてくれる涼やかな風は何物にも代えがたいほど安らぐものである。そこから転じて感謝の踊りと解される。涼やかな色の紅型で踊られる作田は、見ていてとても清々しい。夏にぴったりの踊りである。

琉球舞踊古典女七踊りはあと2つ。それらはまた次回に。
以上、沖縄の気になる琉球舞踊古典女七踊りPart.2でした
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