首里城消失


2019年10月31日朝、とにかく早朝から自宅の上空をヘリコプターが飛んでいる音がする。うるさくて寝ていられない。

自分が住んでいる首里に米軍基地はないとはいえ、米軍機が上空を飛ぶことはよくあり、たまに恐怖を感じるほど近くを飛ぶこともある。今朝はなんだかよく飛んでいる、でも今日はヘリか?などと、まだ起きる前のねぼけた頭で考えていた。

すると、「あーうるさい」とヨメさんが起きてカーテンを開けた。確かにヘリが上空を飛んでいる。なんかあったか、とスマホを見るヨメさん。

そして次の瞬間、「えー!!はー?!」

「首里城が、燃えてる??」
ネットニュースにそう載っている。そしてたくさんの友達から「大丈夫か?!」とLINEが来ている。

あわてて窓を開けて首里城の方向を見ると、首里城当たりから黒煙がのぼっていて、消防車からかけていると思われる水の軌道が見えている。まさに今、燃えているのである。

しかも、いつもあったはずの首里城正殿がどうも見当たらない。

何があったー?! どういうことー?!

混乱する中、テレビをつけてみると首里城が大火事になっている夜中の映像が流れ、どの局もまだ燃えている北殿と南殿の消火活動をリアルタイムで報道している。

混乱。そして呆然。
どうやら一部が燃えただけではなく、すでに正殿は全焼しているようである。

あの首里城が???

ひたすら呆然とニュースを見て、実際の首里城を窓から見て、それをひたすら繰り返していた。

未明から大騒ぎだったようだが、自分の自宅は少し離れているためまったく気づかなかったようである。そして早朝から飛んでいるヘリコプターは、どうやら報道関連用のヘリだったようだ。

首里城が燃えた。。

その日は一日、そのことで頭がいっぱいで、何も手につかなかった。。

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自分は首里城が好きで、沖縄に引っ越すときもぜひ首里城が見えるアパートに住みたいと思って探していた。でも、どの不動産屋でも「窓から首里城が見えます」とか、「首里城まで歩いて〇分」とか、そういった情報は皆無。

どうやら首里城が見えたり近くにあることは売りではないらしい。

しかし、たまたまあるアパートの部屋の紹介写真で、窓から首里城が見えているのを見つけた。さっそく内見に行って決めたのが、今住んでいるアパートだ。首里城には歩いて20分ほどかかるが、アパート自体が少し高いところにあるため、窓から首里城が見えるのである。

夜にはライトアップされている首里城が見え、城下町とも言えるこの首里の落ち着いた雰囲気もとても素敵である。いつしか、毎朝毎晩首里城を眺め、そこに首里城があることが当たり前になった。

そして沖縄に住み始めて4年、まさかその首里城が焼失するとは思ってもいなかった。思ったこともなかった。

沖縄に生まれ育ったわけではないが、そんな自分にとっての喪失感はあまりにもひどい。

どうやら沖縄の人の中にも、なくなって初めてその価値や自身の思い入れに気付いた人が大勢いるようだ。地元の人もさほど注目していなかったように思っていたが、なくなってしまったことで大勢の人が計り知れない喪失感を感じている。首里城は、まさに沖縄の象徴だったのである。

そして、あの日から2週間(今日は2019年11月15日)。
まだ2週間しか経っていないが、すでに首里城の再建費用のための莫大な金額が、クラウドファンディングや新聞社、各個人の募金活動によって集まっている。もちろん、さまざまな意見があるのも当然だが、首里城の再建を願う自分としては、なんとかしてお金を集めて再建に取り掛かっていただきたい。

資材がもうない、技術を持った職人がもういないなど、難題は山積みのようだし、何年かかるかは分からないが、それでも、もうすでに再建に向けていろいろ進んでいるようである。

早くも大勢の人が今からその日を待ち望んでいる。自分も待ち望んでいる。

さぁ、七転び八起き。何度だって立ち上がろう。
首里城の再建を願って!!
ひやみかせ!首里城!!


*「ひやみかせ」とは、気合を入れたり奮い立たせたりするときの沖縄の言葉です。
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