Crazy


文字通り、「クレイジー」な作品群である。自分の作品のいくつかを特徴づける上ではずせないカテゴリーだ。このカテゴリーに入ると思われる主な作品を3本紹介する。

まずは、その名も「奇人変人」。
小さい頃、よくそんなタイトルのTV番組があった。普通の人間ではできないようなことをやってのけてしまう超人たちを紹介する番組である。例えば、燃え盛る火の上を歩く人、何本もの釘の上に寝る男、飛行機をロープでひっぱって動かしてしまう巨人、見たこともないほど体がグニャグニャに曲がる女性、などなど…。
その中に必ずいるのが、飲み込んだ金魚をまたゲロっと出す人間ポンプだ。この人間ポンプを主人公にした、あまりにも軽いタッチの作品がこれである。

これこそ、マイムだからできる作品と言っていいだろう。なんでも飲み込める。そして、胃袋から出してきたものを客席に投げたりもできる。思わずよけたりするお客さんがいたりするのもおもしろい。こちらが舞台上で表現した物体がお客さんには見えているのである。
しかし、あまりにもバカらしいアレンジで、自分自身も「なんじゃこの作品は…」、と思いながら作った作品ではある…。

またやるかどうかは不明だが、重たい作品の間なんかに挟んで見せると、やるほうも見るほうも力を抜くことができるという稀有な作品ではある、とだけ言っておこう。

そして、「食いしん坊画伯」。
食べながら絵を描く画伯。画伯なのに食いしん坊、食いしん坊なのに画伯、いや、これをただの食いしん坊ですませていいのか? という、これまたあまりにもクレイジーな作品である。

これ以上説明しようもない。ないものがあるように見えるわけで、でも本当はそれがないからできるわけで、マイムだからこそ成立する作品である。画家とモデルの2役を交互に演じる。このへんもマイムらしいといえるだろう。

最後のシーンではお客さんの背筋に寒気が走り「ザワッ」という「音」なのか「声」なのかが聞こえることが多く、それが暗転中に尾をひいてザワザワすることが多い。そんなザワザワを聞いて楽しんでいる、個人的には大好きな作品である。

3つ目は、「スタンプマン」。
忙しくて無能(?)なサラリーマンが、大量の書類にひたすら「日付スタンプ」を押し続ける仕事を言い渡される。最初は不器用に押しているものの、だんだんとスピードアップ。リズムカルに押していくうちに何かが壊れてしまった彼は、あちこちにスタンプを押しながらオフィスを飛び出して…、という作品である。

毎日毎日仕事仕事、スピードスピード、効率効率、できなければクビ。そんなプレッシャーを彼が感じていたかどうかは定かではないが、あるきっかけで誰もが壊れてしまう可能性はある。それをコミカルに描いてみた作品だ。まだ一度しか上演していないが、とりあえず人気は高かった。

次回は、 「Laugh」なカテゴリーの作品を紹介する。