さすがにぬるま湯はキビしいです


ホテルの若オーナーが言うとおり、サマルカンドでは電力事情がとても悪い。この夜も町全体が停電を起こしてしまい、ホテルでは自前の発電機で電気を供給し始めた。しかし、この発電機も頻繁に停止してしまう。

なんとか電気がついているうちにシャワーを浴びてしまおうとヨメさんが先に入った。

ところが、最初はお湯が出ていたらしいのだが、途中からぬるま湯しか出なくなった。おそらく体温よりも微妙に低い温度。ぬるま湯というよりは水のように感じる。ヨメさんは震えながらシャワーから出てきて、すぐさま大量のブランケットの下にもぐりこんだ。

今度は自分が入る番になった。いやいや、こちとら昔はバックパッカーでござんしたよ、お湯なんて出るようなホテルには泊まったことはございません、たいしたことじゃござんせんよ! とばかりにシャワーを浴び始めて気づいた。
・・・今まで全部暑い国だった・・・。
寒い! 冷たい! プルプル震える! 氷点下の気温で、さすがにぬるま湯はキビしいです!

シャワーから出て、ヨメさんと同じようにブランケットにくるまった。
お湯は出るって言ってたのに・・・。でも今さらどうしようもない、とにかく厚着をして寝ることにした。

翌朝、二人とも無事生きていた。遭難するかと思った。

ホテルで朝食。オーナーの男性に「どうだった?」と聞かれたので「いやー、寒かった。But it’s OK」(でもまぁ大丈夫)というと、何やら申し訳なさそうな顔をしてキッチンのほうへと戻っていった。

すると、我々の他にもう1組泊まっていた中年カップルがいて、食堂に降りてきた。同じようにオーナーが英語で質問する。「どうだった? 寒かったですか?」
するとその宿泊客も「ちょっと寒かった」と言ったあと「But it’s OK」と答えていた。
100%良かったわけではないけど大丈夫でしたよ、と言うときに便利な表現である。

彼らはアメリカに住むムスリムとのことだった。女性のほうはいわゆる「チャドル」を着ている。ウズベキスタンに来る前にとなりのカザフスタンを旅行しており、アルマティという街がとにかくきれいで素敵だったと言う。カザフでは石油と天然ガスが採れるため国が潤っており、ウズベクと比べてかなり発展しているそうである。かつては遊牧民もいたのだが、発展のためには定住が必要とのことで定住化政策がとられ、今や遊牧民はいなくなったとのことである。

この朝食ではウズベキスタン名物、日本人なら誰もがお腹をこわすという「プロフ」(チャーハンのようなもの。英語ではその名もoily rice=油ご飯)が出てきた。どんなものかと気合を入れて(?)食べてみたが、これがなかなかおいしい。旅行中に避け続けるのはもったいない料理だ。

あまり量も多くなかったからか、お腹を壊すこともなかった。

人は素朴で優しく、景色や建物は美しく、料理は美味しい。寒い夜も乗り切り、今のところお腹も壊さず順調。旅の前に抱えていた不安は、すべて消えてなくなっていた。

次回、「運転手はバトンタッチ」に続く・・・。
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停電したら手元見えないのでとりあえず電気つくまで待ちます
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運転手はバトンタッチ