モスクですっかり陽は暮れて


夕方になって、ようやくブハラに着いた。
ここでは、昔はメドレセとして使用していた建物を改築したホテルに泊まる。

外観からはホテルかどうか全く分からない。大きな木戸を開けて中に入る。
開けるとそこは中庭のようになっており、その昔使っていたらしい馬車のデッカイ車輪なんかが置いてあったりする。
テーブルやイスなんかも置いてあるので、季節が良ければここでティータイムを楽しめるのかもしれない。
今は氷点下なので体が冷え切って無理だが。。。

ホテルのスタッフに案内されて2階へと上がる。階段はとても天井が低く、ものすごく狭い。
2階にのぼり私たちの泊まる部屋に入ると、暖かい赤色をしたカーペットやカーテンで統一してあり、暖房も問題なく使える。
かなり落ち着く、雰囲気のあるいい部屋だ。
ゆっくりしているとそのまま寝てしまいそうなので、とりあえず町に出てみることにした。

ブハラは、町全体が世界遺産になっている。中世の雰囲気をそのまま残したような街並み。
決して大きくはないので、行きたい所にはほぼどこへでも徒歩で行ける。

ホテルから歩いてすぐのところに、ラビハウズがある。ブハラ最大の名所の1つだ。
貯水池が真ん中にあり、周りにはメドレセがある。
ここは広場であり、通り道であり、人々が憩う場でもある。
なんとなく座り込んでしゃべっている若者たち、そのそばではおじさんたちも立ち話をしている。
小学校帰りらしき子供たちが声を上げながら歩いている。その横には、なぜか羊を散歩させている子供がいる。家で飼っているのだろうか。
子連れのお母さんが子供に話しながら通り過ぎる。仕事帰りらしき女性が足早に去っていく。

建物やこの辺一体の景色は観光客にとっては絶好のロケーションだが、このあたりの人にとっては当たり前の風景のようである。この辺の建物は今ではお土産屋になっていたり、レストランやキオスクのようになっているが、ちょっと裏手に入ると人々の生活空間となっている。

その景色がとても気に入り、何枚も何枚も写真を撮った。
どこを切り取っても絵になる。自分が名カメラマンにでもなった気になる。

陽も落ちてくるころ、近くのモスクに寄ってみた。
モスクといっても何も仰々しい形をしているわけではない。注意して歩かないと見落としてしまうような小さな建物だ。
ちょうどお祈りの時間。パラパラと人が集まってくる。
とりあえず敷地内に入ってウロウロしていると、このモスクの導師らしき人に「中に入れ」と手招きされた。

靴を脱いで中に入ると、6メートル四方ぐらいの広さにカーペットが敷いてあり、そこではすでに何人かがお祈りを始めていた。建物内の壁は白で、天井は真ん中が丸く突き出た形となっている。
私たちは部屋の一番後ろにある丸イスに座らされた。

お祈りの時間まで10分。静かに待つ。
お祈りをしにきた人が5人、6人と入ってくる。私たちをチラッと見る人、まったく気づかない人などさまざまだが、話しかけてきたり「誰だ?」などと怒り出す人は一人もいない。
日常的な空間ではあるが、やはり特別な時間である。

時間になり、さきほどの導師が前へと進んでお祈りの言葉を唱え始めた。
ひざをついて座り、そのまま頭を下げて床におでこをつけ、また立ち上がる。
私たちはイスに座ってその様子を静かに見ていた。
この空間、音、雰囲気。日本人にもこのような時間が1日に何度かあれば(お祈りではなくても)、ストレスやイライラが少しは落とせるかもしれない。

特にお祈りをしたわけではない私たちも、終わった頃にはなぜかスッキリした気持ちで外に出ることができた。
導師にお礼を述べて、モスクを後にした。

外は陽もどっぷり暮れて真っ暗である。
モスクのすぐそばにある小さなレストランで夕食をとった。

次回、「世界遺産の町を散策」に続く・・・。
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