カラカルパクスタンのナン


寒かったもののなんとか眠りにつくことはできた。
しかし、明け方になってやはりトイレに行きたくなった。

朝5時半、ユルタから外に出てトイレへと向かう。うっすらと東の空が明るくなりつつある。トイレを済ませてもう一度空を見てみると、あぁなんときれいな空の色。

ユルタに戻ってカメラを取り出し、ひたすら写真を撮った。アングルを変え、ホワイトバランスを変え、少ないカメラ知識を駆使してひたすら30分以上も撮りまくった。

ふと遠くを見ると、昨日ラクダにのせてくれたおじいさんが、今度は馬に乗ってパッカパッカと進んでいる。こちらが大きく手を振ると、向こうも手を振って応えてくれた。
おじいさんではあるが、体はかなり大きくがっしりしている。顔もなにやらモンゴル人に近く、なんだかモンゴルの遊牧民を見ているようであった(モンゴルに行ったことはないが)。

気が付くと、指がガチガチに凍えている。この寒さの中、手袋もせず30分以上も写真を撮っていたのだから当然だ。
もう一度ユルタに戻り、毛布にくるまって寝ようとしたが、体がガタガタ震えてまったく眠れない。完全に体が冷えてしまった。正直、こんなにガタガタ震えながら寝るのは生まれて初めてだ。
こんな体験を砂漠でしてしまうとは、まったく予想していなかった。。

そのまま朝食の時間になったので起きた。ヨメさんも目を覚ましたようだ。
あとから聞いたところ、ヨメさんもこの夜が人生で一番寒かったらしい。遭難したようだったと。

食堂に向かうとそこにはストーブが置いてあり、前日ここまで自分たちを乗せてくれたドライバーが待っていた。
彼は別の部屋に泊まっていたのだが、寒くなかったかい、相当寒かったね、などと声をかけてくれた。
彼は何ヶ月かに1回ユルタツアーで運転をするのだが、前回来たときは雪が降ったらしく、そのときと比べると昨日はまだマシだったらしい。

温かい料理を食べているうちに体が温まってきた。

ツアーのパンフレットによると、ウズベキスタンの主食であるナン(ノンとも言うらしい。インドでもナンと言うが、丸いパンのことである)を作るところを見せてくれるらしい。そのことをドライバーに聞くと、もう今日はナンを作り終えたからムリだ、と言われた。

そうですか、とちょっと残念そうにしていると、彼は裏に入っていき、しばらくして戻ってきた。

「昨日、あっちのほうに歩いていったって言ってたよね? そこに家があったと思うけど、そこでナン作りを見せてくれるって」と言う。

そう、昨日ユルタで昼寝する前に、あちこちウロウロ散歩したのだが、たしかに家があった。
ラクダに乗ったときにも見えた、ヤギを飼っている家だ。
ドライバーが気をきかしてその家に電話してくれたらしい。そして、ちょうど今からナンを焼くから見に来てもいいよ、と言ってくれたらしい。

一般家庭におじゃまできるいい機会だ。

しかし、その家に行くための道が特にあるわけではなく、だだっ広い大地を歩いていかなくてはならない。昨日散歩したときもそうだったのだが、特に道や目印がないので、歩いているうちに、ちゃんと元の場所に戻れるか途中で心配になる。

とりあえずドライバーに正しい方向だけ聞いて、途中で何度も何度も振り返ってちゃんとした方角に進んでいることを確認しながら、とにかくまっすぐ歩いていった。

5、6分歩くと、遠くのほうに家らしきものが見えた。よかった、安心した。

その家まで着いたものの、中には誰もいないようだ。ヤギのいる小屋は、まだここから400メートルほど離れている。この家の人たちはどうもそこにいるらしい。

そこに向かって歩いていくと、お母さんらしき女の人と、まだ小学校低学年くらいの男の子が向こうから歩いてきた。
とりあえず大きな声であいさつだけすると、言葉はまったく分からないが、家に入ってくれればいいよ、というようなことを言っているらしい。

彼らを待って一緒に家に入らせてもらった。
サッカーボールを持った男の子の名前は「ヌルショー」というらしい。

家の中に入ると、もう1人まだ小さい赤ちゃんがいた。その横でナンを作り始めるお母さん。後からおじいさんとお父さんも家に入ってきた。このおじいさんは昨日ラクダにのせてくれたおじいさんだ。

カメラを動画にして撮影していると、少年やおじいさんがまじまじと見ている。どうもおじいさんが少年に「これが日本のカメラだよ。すごいだろ。ああやって動いている人を撮るんだ」などと説明しているようである。

ナンをこね終えたお母さんが、今度は外に行こうという。行ってみると、外にタンドール(ナンを焼く釜)があった。
その釜の内側に、丸く伸ばしたナンをペタっとはりつけて焼くのである。
おじいさんがいろいろと説明してくれる。よくは分からないが、カラカルパクスタンのナンはウズベキスタンのとはちょっと違うんだよ、というようなことを言っているらしい。

ちなみにこの地域は、カラカルパクスタン共和国である。実はウズベキスタンの中にもう1つの国(自治共和国)が入っており、ヌラタという町はこのカラカルパクスタン共和国の首都ということになっている。

ナンを焼く時間はほんの数分だ。すぐにできたてホヤホヤのナンを食べさせてくれた。これがまたおいしい!

お礼に、今回も日本から持ってきた絵ハガキをプレゼントした。
ありがとう、そろそろ戻りますよと言うと、「どうもありがとう。あなたたちの健康を祈っていますよ」ということを言ってくれているようだった。

ユルタに戻ると、ドライバーが車のエンジンをかけて準備していた。
バタバタと準備してアットホームなスタッフたちにあいさつし、車に乗り込んだ。
サマルカンドへと向かった。

次回、「メインディッシュはトーク?!」に続く。。
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