Iの場合―ツイてツイてツキまくれ!


え〜、始まりました、連載企画。
その栄えある第一回目は、小学校時代からの知り合い、Iを紹介しよう。

Iはバカである。しかし妙に運がいい。
特に金運に関しては、時に夢のような強さを発揮する。
私が大学生の時、オーストラリアに卒業旅行に行こうとIを誘った。
その時彼は、けっこうお金を持っていたのですぐさまOKとなったのだが、
時が経つにつれてどんどん彼の貯金が減っていく。
競馬とパチンコで遊び呆けていたのだ。
かくして旅行1ヶ月前、彼の貯金は残り3万円。
これでは旅行に行けない。
かといって一人で行くのも寂しい。
そこで、なんとかして金を作ってほしいと頼んだところ、彼はどうしたか?
なんと、その3万円を握り締めて、また競馬場に行ったのである。
なんでも夢でお告げがあったという。
それによると当たり馬券は3−7。
彼はその日の全レース、3−7の馬券を買ったのである。
結果、なんと2レース的中、うち1つは350倍の大万馬券だった。
彼はこの日、しめて40万を手にしてホクホクでご帰宅となったのである。

晴れてオーストラリアに行くことができた私達は、早速ゴールドコーストでカジノに出かけた。
そこでまたしても彼は、やってくれるのである。
ポーカーでストレートを出し、賭け金の他にボーナスとして100ドルゲット。
その後も勝ち続け、明け方、リッチにもタクシーでホテルにご帰還となったのである。

圧巻はキャンベラのカジノでのこと(まだ行っとんのかい)、
ブラックジャックをやっていた時である。
ブラックジャックとは、引いたトランプの数字を足して、より21に近い方が勝ち、
22以上になるとアウトというゲームである。
通常2枚引いて、16以上だともう1枚は引かない。
しかし彼は強引に引き続け、見事勝ち続けていた。
(横で見ていた私はスッカラピンだったが)。
周りにも彼の快進撃を知ってギャラリーが集まってくる。
中には彼のカードにチップを賭け始める者まで出てきた。
彼が勝てばそこにチップを置いた者も賭け金をゲットできるのである。
えらいことになってきた。
みんな彼のカードに賭け始めたのである。
見てるだけで金が入ってくるのだから、ヤンヤヤンヤの大騒ぎ。

しかし、それが一瞬にして罵声に変わった。
見ると、Iは2枚のカードを引いてすでに19に達しているというのに、
ディーラーにもう一枚くれと要求したのである!

19なら勝てる。
21までなのだから、もう一枚は1か2のカードでなくてはならない。
自殺行為である。
ギャラリーも賭けた金がおしいのでIをとめる。
ディーラーもホントにいいのかと何度も確認する。
しかしIは、「もう一枚! もう一枚!」と要求。
ディーラーも「こんな奴見たことない」といったあきれ顔で、
ついにもう一枚を彼に渡した。
「Oh,my god!」とキレる寸前のギャラリー。
暴動が起きるんじゃないかと逃げ支度を始めた俺。
しかしその瞬間、その場はまた、大歓声に変わったのである。
見ると、なんと彼が引いたもう一枚のカードは、2。
見事21のブラックジャックなのである!
当然勝ち、賭け金ゲット。
これを最後に、今度はリムジンで悠々のご帰還となったのである。

後でIに、なぜもう一枚引いたのか、2が来るのを知っていたのかと尋ねると、
彼は平然と、「いや、19でももう一枚引けるかどうか試してみたかってん」
と言いやがった。
なんて大胆。なんてバカ。
しかしギャンブラーはこうでないといかんのかなぁ・・・。

さぁ、そんな彼を偉人伝に加えよう。奴の名はI。The Man of Legend!
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