Y氏の場合―大人なのに
やってしまっております、極私的偉人伝。
第四回目の今日は、私の親戚(仮にY氏としておこう)を紹介しよう。
Y氏とは、祖父のお通夜で初めて会った。
ちょうどその日は、私の18歳の誕生日の前日でもあった。
ウチはあまり親戚同士で集まることも少なく、お通夜の場で初めて会う親戚が続々登場するのを見て戸惑ったのを覚えている。
やがて狭い自宅の部屋で坊さんの読教が始まった。
私にとっては初めての身近な人の死であり、何か捉えどころのない、処理できない気持ちを抱えながらその読教を聞いていたのだが、ふと見ると横にいたY氏が、なぜか妙な顔をして坊さんの頭を見ている。
いい年したおっさんが口を半開きにして、不思議そうな表情をしているのだ。
どうしたのかと思ってその視線の先を見ると、なんと坊さんの頭に、部屋の電灯から垂れ下がったヒモの先が乗っているのである。
しかもウチは、そのヒモの先にモンチッチの人形をつけていたもんだから、ちょうどモンチッチが坊さんの頭にチョコンと腰掛けている状態になっていたのである。
私はさっきまで抱えていた不思議な気持ちを瞬時に忘れ、思わず吹き出してしまった。
その後もY氏は、なんとかしようと手を伸ばそうとしたり、口で吹いてモンチッチを落とそうとしたがうまくいかない。
傍で見ている私は笑いをこらえるので必死。
そしてついに読教が終わった時、悲し涙の輪の中に一人、笑い涙の私がいた。
ほんとに笑いというのは破壊的で、その場では失礼だと思えば思うほど笑いが止まらない。
しかしおもろいおっさんであった。
それまで見たこともないほど、美しいぐらい不思議そうな表情をしていた。
その表情があまりに印象的だったので、後でY氏になぜあんなに不思議そうな顔をしていたのか尋ねてみた。
するとその答えに、私はまた大爆笑してしまったのである。
彼曰く、
「いやー、モンチッチがよう滑り落ちひんなぁと思って・・・」
バカかあんたは・・・。
さぁ、そんな彼を偉人伝に加えよう。奴の名はY。 The Man of Legend!
・・・しかし、彼と私はどういうつながりなんだろう・・・
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