第3章 感じのいいピッタリマーク

セントラルマーケットに向かう途中、商店街に出くわした。アジアンな衣料に興味のあるヨメさんは服を購入したいと、その商店街を物色してみることにした。

私たちが物色していると、店員がピッタリマークしてくる。店員は私たちの様子を観察し、何か言おうとするとそれを感じ取って、気に入りそうな服を持ってきてくれるのである。
ここでも買わせようとうるさく声をかけたり、セールス文句を並べたりはしない。
ただこのピッタリマークは万引きの監視も兼ねているようである。庶民的な店ほど監視が必要なのかもしれない。

その商店街のとある店で、ヨメさんが可愛らしい服を見つけた。値段も50リンギットをきっている。試着してみる。試着室の中は暑いらしく、ヨメさんは汗だくになり「汗で脱げへん。服が脱げへん!」と叫びながら、一着を購入した。

それからセントラルマーケットに向かった。
少々薄暗い感じのする、ともすれば近寄りがたい雰囲気のマーケットである。2階は雑貨や服、ゾウリ、1階は食料品やフルーツが並んでいる。食事も食べられるようになっている。

怪しい雰囲気のマーケットを歩いていると、外は小雨が降りだした。
雨季は終わっているのだが、時々スコールが降るという。
近くのデパート・KKマーケットに移った時に雨が強くなってきたので、そのままそこで雨宿りをすることにした。

なかなかでっかいデパートだった。4階もある。日本のデパートと比べても何ら遜色なく、しかも観光客ではなく一般のコタ・キナバル人で賑わっている。街中を見てもかなりの高層ビルが建っているし、道路を見ればトヨタを始め、日本車もたくさん走っている。
生活レベルは高いようである。

しばらくして時計を見ると、もう昼の2時半になっていた。
「お腹がすいた…」。
我々二人は空腹になると、ものの見事に元気がなくなる。
「スコールって2時間も降るんか、おい…」。
機嫌の悪い時はたいてい空腹の時である。
お昼ごはんはマレー料理が食べられるレストランで、とガイドブックを見て決めていたのだが、激しい雨が降っているので出られない。
仕方がない、小雨になったところで濡れながらレストランへと歩き始めた。

着くと、狙っていたレストランは、…閉まっていた。
昼間は閉店しているらしい。おぉ、雨の中を歩いてきたというのに! 空腹の病は我らをさらに蝕んでいるぞ…。
お互い声も出なくなってきた。最後の気力をふりしぼり、ガイドブックをにらむ。すると、なんとか徒歩圏内にもう一軒、マレー料理のレストランがあるではないか! ここだ! ここに向かって歩け!

ほうほうの体で着いてみると、ここは開いていた。命拾いした。

なかなかきれいな店だった。中途半端な時間なのでお客さんはほとんどいない。
メニューを見ると、ところどころに写真があるものの、料理名だけで良く分からない。英語と漢字(中国語)、マレー語が並べて表示してある。
店員に、これはライスか、ミー(麺)か? などと尋ね、おそらくマレー料理らしきものをたのんだ。恋焦がれ、待ちわびて出てきたその平たい麺の料理は・・・、うまい! これはうまいぞ! いいね、マレー料理! 
そしてヨメさんのはシーフードにライス。食べてみると…、いい! これもいけるじゃないか! 
マレーシアの料理はうまいらしいと聞いてはいたが、こんなにもいけるとは!!
 そしてドリンクに頼んだTEH TARIH(テタリ、あるいはテタレ)は、これまたひじょうにうまかった!! 紅茶が泡々になっていてとっても甘いドリンクである!!
これが今回のNO.1ヒットとなった。空腹から救われたと同時にこのうまさ。「うまいなぁ。これはうまいなぁ〜」と、ひたすら絶賛の嵐を吹き荒らす二人であった。

その後、幸運なことに雨も止んだので、州立のモスク(イスラム教寺院)へと向かうためタクシー乗り場へと歩いていった。味覚と空腹が満たされ、いい気分である。

イスラム寺院…。私はインドでイスラムのお祈りに参加したことがある(というか紛れ込んだだけなのだが)。ぜひともヨメさんにそのお祈りの一体感と静溢感を感じてもらいたい、そう思っていた。
マレーシアは大半がイスラム教徒。このため、タバコや酒も口にしない。よって、タバコの煙が大嫌いな私たちにとってはとても過ごしやすい国なのである。

ちなみにここコタ・キナバルのタクシーに関しては、メーターはないものの事前に場所を伝えて料金を確認する。そして流しのタクシーはなく、必ず乗り場へ行って拾うのである。

到着したモスクはきれいでデカかった。警備の人なのか受付の人なのか分からないが、「ここで靴を脱いで、女の人はこれを羽織って」などと案内をしてくれる。

お祈りをする場所にたたずんでみた。
静かである。見上げる天井は丸く、高い。
今はお祈りの時間ではなく、誰もいない。しかしあとしばらく待てば、人も集まってきてお祈りも始まるだろう。そう思い、案内人(?)に「お祈りを見ることはできるか」と尋ねると、いとも簡単に「ムリだ」と断られてしまった。見学は観光客でも許すが、その辺はしっかり一線を引いているらしい。
残念! しかし神聖なものを汚す意図は全くない。
礼を告げて、外に出た。

…さて、どうやってホテルへ帰ろうか?? 流しのタクシーはない。乗り場は遠い。 「とりあえず、このモスクの写真を撮って、それから対策を…」と思って撮っていると、ひょっこり迷い込んできたようにタクシーが一台、ゲートから入ってきた。 誰か乗せてきたのかな、と思って見ていたが誰も降りてこない。
すると運転手、窓を開けて私たちに「…タクシー?」と声をかけた。
なんで分かったの? タクシーが必要なことを?? 
ちょいと不思議な気もしたが、これぞアラーの思し召し、無事ホテルへと帰ることができたのである。

さて、今日の目標はあと一つ。わたくしめの海外旅行に欠かせないもの、それは、民族舞踊の鑑賞である!! 私は民族舞踊が大好きである。とにかくインドでもネパールでも沖縄(海外じゃないけど)でも、これを見ずには帰れないのである!

次回、「戦う気のないダンス」へと続く…。
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