10. 木彫りのおみやげについて考える


バリはダンスや音楽だけでなく、銀細工や木彫りも盛んである。
時間の都合で銀細工や絵画にはあまり触れることはなかったが、木彫りに関してはその素晴らしさを垣間見ることが出来た。

私たちが泊まっていたホテルのプールサイドに、少し太めでバリの民族衣装に身を包んだ男が座っていた。そこに布を広げ、木彫りの商品を並べている。時々通る宿泊客に声をかけながら、そこでずっと木を彫り続けていた。
どうせ大したものでもないのに高く売りつけるのだろう、そう思って気にも留めていなかったのだが、最終日になってお土産をどうしようかと悩み、とりあえず見てみようかと近づいてみたのである。

ガネーシャがきれいに彫られた木彫りがある。また前日にウルワツ寺院で見た、ラーマーヤナのストーリーの一場面の木彫りもある。そして予想に反して、その技術の高さに目を奪われてしまったのである!

手に取って見た。間近で見ても悪くない。私はこういうのを作るのは全くできないため、どうやって彫っていったのか想像もつかない。

気に入ってしまった。とりあえずこのラーマーヤナの木彫りを自分用のお土産として買うことにし、実家へのおみやげとしてバロンの顔が中央に彫ってある、横長のプレートのような形の木彫りを買うことにした。横長のところにネームを入れてくれるのである。そのままドアに掛ければエキゾチックな表札に! という代物である。こういうのは観光地によくあるものかもしれないが、とりあえずラーマーヤナとこれ、計2つ買うということで大幅にディスカウントしてもらい、今からネームを彫って2時間後にはできる、フロントに預けておくから、と言われた。

そしてチェックアウトの時に受け取った完成品を見て、これまた驚いた。きれいにネームが彫ってあったばかりか、その両横にはハイビスカスまで彫られている。買うときにはバロンの顔しか彫られていなかったが、完成品のところどころは金色に塗られており、ムラなくきれいに塗られたニスが重厚感をかもしだしている。2時間でやることだからと大して期待していなかったが、予想以上の完成度に「こんな値段で良かったのか?」と恐縮してしまうほどであった。(ちなみにもっと小さな木彫りが帰りの空港で売られているのを見たが、それ1つで私が買った木彫り2つの2倍の値段であった。)

彼の技術が標準的なのかは分からない。ホテルに入っての販売を許されていたのだから、技術的にも人間的にも信用のおける人物だったのだろう。しかしだまされたり、しょぼいものを掴まされるのが必然の東南アジアで、これは見事に良い意味で期待を裏切ってくれた。なんかあった時のためにと、彼の電話番号まで入れてあったのである。

運が良かったのか、バリ人はみんなこうなのか。またしてもこの疑問が沸いてくる。

また行くことがあるのかは分からないが、ビギナーの私にとってバリはまだまだ奥深そうである。
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