1. 化け物たちのダンスについて考える


芸能豊かなバリ島。中でも私にとって絶対はずせないのは舞踊だ。

バリには様々な舞踊、そして舞踊団がある。
まず見に行ったのはティルタ・サリという舞踊団。
何人もの楽器奏者が舞台上手側にいて演奏している。この生演奏にのってダンスが行なわれる。

バリ民族音楽(インドネシア音楽)の曲調は日本人にとっては独特である。
メインの旋律はガムランという楽器(鉄琴のような打楽器)で奏でられているのだが、これは安らぎを与えるというよりも人間の精神に揺さぶりをかけるような音色である。同時にたくさんのガムランが演奏されるのを聴いていると、そのリズムに飲み込まれ、ある種トランスのような状態になってくる。別世界へつながろうとしているかのようだ。

この舞踊団はいくつかの演目を何本か見せてくれる。女性が踊るもの男性が踊るものと色々あるが、ジャンプや回転があるわけではなく、非常に平面的で地味な動きをする印象である。膝や肘を横に開いて、平面的に横に動く感じ。それに反して衣装は非常にきらびやか。私たちのイメージを裏切らない、期待通りの風体である。

そんな中、1つ度肝を抜かれた演目があった。バロン・ダンスである。
それまでのきれいなダンスとは違い、人間と同時に化け物がたくさん出てくる演目なのである。落武者のような頭をしたガイコツ、歯が出て爪の長い化け物、枯葉をいっぱい体につけたいも虫のようなやつ・・・。
セリフなんかも交えながら進んでいく。どちらかというと舞踊というより寸劇のようである。そして最後は獅子舞にも似たようなでっかいバロン(シーサー? 狛犬? のような守り神)がドーンと登場するのである。
こんなのは全く予想もしていなかった。

私がなぜこの化け物たちを気に入ったのか? 
それはバリ島土着のものを感じたからである。バリの人たちの自然に対しての畏怖心のようなものである。

バリ島は自然が豊か、そして人々は未だに迷信のようなものを信じているという(例えば病気になったときは医者に行って薬をもらうのではなく、巫女さんのようなところに行ってお祓いをしなくてはいけない、とか)。そのような畏れが、あのような化け物たちとなって現れ出ているのではと直感したからである。

後の時代になってよそから伝わってきたヒンズーやイスラムの影響を受けていない、バリの人々の原始的な思想を見たような気がしたのであった。

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