6. バリマッサージについて考える


バリ島ではエステ、あるいはバリマッサージというのがさかんだ。
女性だけでなく男性だけ、あるいはカップルでもどうぞ気軽に! というのがバリマッサージの売りらしい。
クタにあるホテルから歩いていけるところへ、とりあえず行ってみることにした。

私は肩こり持ちである。いや肩だけではなく、首、腕、腰にふくらはぎと、全身のコリ具合には相当の自信がある。美容院でたまにサービスとして肩を揉んでもらうことがあるが、私の肩を揉んだ美容師が突き指したぐらいである。これをほぐしてもらいに行こう、いや、でもそういう認識で行くと絶対物足りないはず、そう思ってあまり期待せずにお店に入ってみた。

とりあえず短い時間の背中だけのコースにした。
受付の人の応対は良かった。マッサージ師の雰囲気もいい。
そしてマッサージを受けてみるとけっこう指の力が強く、コリがほぐれていくのである。
小さくてか細い感じの女性マッサージ師だったが、強めの力具合がいい。
タイやマレーシアで受けたマッサージは、コリをほぐすというよりも、よく言えば「癒し」に重点を置いたような感じである。肩コリ派代表としては、体を触られているだけに過ぎず物足りない。(中国系の人によるものを除く。ちなみに私は、ツボマッサージを受けるなら中国系の人が最高だと思っている。)
東南アジアのマッサージは軽めで「癒し」重視なのだ、ゆえにバリでもそうなのだと思っていたのだが、私のような接骨院慣れした体でも納得のいくほぐれ具合であった。
決してゴリゴリやるわけではないのだが、驚いたことに体が楽になっている。

マッサージの最中の気遣いもなかなかであった。痛すぎないか、クーラーは寒すぎないか。またこういうところでは荷物を置きっぱなしにするので、盗られるのではないかと気になって落ち着かないものだが、誰だか分からない人が入ってくることもなく、むやみやたらとマッサージ師たちがウロウロしたりもしない。また我々の理解できない現地語で、彼女らスタッフがひそひそ話し合うということもない(こういうことをされると、例え他愛のない日常会話だったとしても、なにやら企んでいるように聞こえるのである)。
かなり教育が行き届いている感じがした。

私はバンコクでタイマッサージを受けたことがある。最後は逆エビぞりのようなことまでされてボキボキやるのだが、しかしあんまり効いたような感じがしなかった。指圧が弱いのか、もしくはとなりのマッサージ師としゃべりながらやっているせいなのか、あるいは体の固い自分に向かってなんのためらいもなく「カラダカタイネ」と言うからか、とにかく指圧されるベテランとしては満足のいくものではなかった。
その点バリマッサージは店員が皆真面目である。(気に入ったのでこの後2回も別の店へ受けに行った。)おしゃべりしながらなんてことはない。

このへんの統制具合はなんなのか。こういったお店は日本人が経営者であることも多いと聞く。それゆえ教育が行き届いているのか? あるいはバリ人の性格によるものなのか?

バリの収入源は観光業である。国も大きな収入源として、バリの観光業を推進していると聞く。確かに物売りやらタクシーの運転手が寄ってきて面倒くさいこともあるが、政策的なこともあってか概して観光客には親切である。政策が行き届いているので良い感じなのか? それとも元から優しい人種なのか?

その答えの1つになるかどうかはわからないが、この店のまん前に学校があり、その学科の書いてある看板にはTOURISM、つまり観光学となっていたのである。その下にはベッドメーキング、マッサージなどという文字も見える。生徒たちの背格好からすると、おそらく小中学生といったところか。選択コースかもしれないが、学校教育として観光業に従事するための教育が行なわれている可能性がある。

そこで、近くのバス停で待っている女子中学生に聞いてみようと話しかけてみた。どんなことを勉強してるの、と。
しかし英語で話しかけてみたのだが、恥ずかしがって答えてくれない。友達同士で顔を見合わせて笑っている。分からないのかと思ってDo you understand English? と聞いてみると、Yes! と返ってきた。 You understand! 分かってんじゃないの!と言うと、ギャハハハと笑われて、また答えてくれなかった。なかなかシャイな性格のようである。

結局よくは分からなかったが、後でタクシーの運転手に聞いてみたところ、やはりそういうことも学校で教えるらしい。観光が一大産業であるということは、そこに就職の機会もたくさんあるのだろう。学科として勉強すれば、ある程度統制のとれたものになっていくのかもしれない。

怪しげでないこれらのお店は、日本人の女性やカップルの心を惹きつけて離さないだろう。恥ずかしながら、私も気に入った一人である。

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