8. 理想郷について考える


理想郷とはどういった所であろう。現実として考えられる理想的な生活とはどのようなものか。

実は、バリのことを「理想郷」であると定義する学者たちがいるらしい。その理由は、ここでは気候が暖かくて湿潤、ゆえに作物が育ちやすい。育つのが早い。よって、一日の労働時間が短く、あっという間に収穫でき、あとの月日を自由に使えるからだ、というのである。

これが現在のバリ島の状況と合致するのかは分からないが、なるほど、労働時間が短く、食べ物に困らない。これは理想郷と言えそうだ。

そしてその大量の空き時間を利用して、バリ人は絵画や銀細工、木彫り、また音楽や舞踊などに没頭してきたのだという。それゆえ今日のような芸能・芸術の盛んな島になったというのである。そしてそういった心の余裕からか、バリ人は概して温和な性格である。

日本は経済的に豊かだというが、食べるため生活するために長時間の労働が必要。そして芸術にはお金も時間も費やさない。これでは本当に豊かな生活といえるだろうか。

バリは私にとって理想郷であった。

・・・しかし、よく考えてみるとバリの良さは、理想郷ではなさそうな日本で稼いだ円を持って、ダンスを見たり絵や木彫りを買ったり、安いご飯を食べたりできるところにある。つまり私の場合、あくまでも旅行者の視点としてバリは理想だったということになってしまう。

私にとって理想郷というのはつまり、別の国のいい所をちょっと味わう、その短い時間のことをいうのかもしれない。
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