7. ヒンズーについて考える


バリ島の宗教はヒンズーである。これだけヒンズーが濃いのは世界でもインドとここだけだろう。
ちなみにバリ島が属する国・インドネシアは、イスラムが主な宗教である。仏教やキリスト教が大半を占める地域もあるらしいが、ヒンズーはバリ島だけである。

インドネシアに宗教が伝わってきた順番としては、おそらく仏教、ヒンズー、イスラム、そして最後にキリスト教となるのであろう。仏教の影響があった証拠としては、ボロブドールというところに仏教の一大遺跡がある。その後ヒンズーの影響を受け、イスラムに飲み込まれた、ということのようだ。ところがこのイスラムの勢力は、バリ島にだけは及ばなかったらしい。この小さな島は、イスラムにとって全く重視されなかった。
かくしてバリはイスラムに飲み込まれることはなく、ヒンズーを信仰し続けた。これがまたバリを、インドネシアの中でも特別なものにしているのである。

バリがヒンズーであるということも、日本人をひきつける要因になっているのではないかと思う。日本人がヒンズー自体に惹かれるだろうということだけでなく、その思想性を持つ人々にも、である。

どういう思想か? ヒンズーは八百万の神を信じる多神教である。日本人もいろんな仏を拝んだり(仏教)、木や石までも祀って拝む(神道)という多神教。ゆえに、一神教のイスラムよりもヒンズーの人とのほうが考えを共有しやすいと思われる。そして、これはあまり知られていないが、日本の神様にはヒンズーを起源とするものがある。七福神のうちの弁財天はサラスワティ、また大黒天はシバにその起源を発している。同一人物といってもいい。実はつながっているのだ。

動物の神様もいておもしろい。象の顔をしたガネーシャ、猿のハヌマーン、鳥のガルーダ。

またヒンズーには厳しい戒律があるわけではなく、いろいろなものを受容してしまう広さがある。このへんも日本の大乗仏教に通ずるものがある。
ヒンズーは仏教でさえもヒンズーの一部であると捉えている。つまり仏教の開祖・ゴータマ・シッダールタは、ヒンズーの神・ヴィシュヌの生まれ変わりであるとされているのである。この飲み込みの広さは驚くべきである。一神教で他を排除するかのような思想ではなく、全てを包含してしまう。

宗教について深く考える日本人はあまりいないかもしれないが、一度こういった視点で考えてみるのもおもしろいかもしれない。
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