Music is Her Life


去年は福原美穂のライブに3回も行ってしまった。
以前にこのサイトの「My Personal No.1!」コーナーでも紹介した、北海道出身のシンガーソングライターである。

とにかく去年は、彼女の歌にドップリとはまってしまった。
彼女のCDは北海道だけでリリースされていたものも含めてすべてゲットし、インタビューが載った雑誌もいくつか購入。さらに、TOKYO FMのとある番組にゲスト出演した際には、渋谷のスペイン坂スタジオ(収録の様子がガラス張りで見られる)まで見に行ってしまった。

福原美穂…。
15歳のときに地元の北海道テレビで放映されていた番組のワンコーナー、「サビから選手権」(素人がサビだけ歌って勝敗を決める)に出演したことがきっかけでスカウトされた彼女は、18歳のときに北海道でインディーズデビューを果たす。道内だけで発売された2枚のアルバムは1万枚のセールスを記録し、その一大旋風に乗って20歳でメジャーデビューすることとなる。
そして2011年1月現在、シングル8枚、アルバム2枚、ミニアルバム1枚をリリースしており、テレビへの露出は少ないものの、自身のワンマンライブやライブイベントへの出演はひっきりなしである。

自分がどうして彼女にハマったかというと、日本アカデミー賞を受賞した、渡辺謙主演の映画『沈まぬ太陽』のエンディング曲を歌っていたからである。映画の感動にうち震えているまさにその時、あまりにもスッと入ってきたのが彼女の歌声だった。英語の歌で、しかも何の違和感もないきれいな発音だったため外国人歌手だと思って聞いていたら、エンドロールに「福原美穂」と出てビックリ。そうか、おそらく宇多田ヒカルのように帰国子女とかで、なんだか有名な親を持ったサラブレッド、日本語のほうがたどたどしい、そういうテイかこれは…。

と思って調べてみると、全くそんなことはなかった。5人という兄弟の多さ以外はいたって普通の家庭で育ったらしい。むしろ兄弟が多くて多少貧しかった(失礼?)っぽい感じだ。シンガーソングライターとして作詞・作曲もしているが、特に英語がペラペラしゃべれるというわけでもないらしいのに、スティービー・ワンダーやジャクソン5、セリーヌ・ディオン、ソウルの女王と呼ばれているアレサ・フランクリンの曲なんかもカバーしている。

どのCDを買えばいいのか迷った挙句、『沈まぬ太陽』の主題歌だった『Cry No More』だけをダウンロードし、毎日ひたすら聞いていた。そんな折、セカンドアルバムがリリースされた。

早速聞いてみた感想はというと…。

ぶっちゃけ、少し物足りない。「もっといけるでしょう!」という感じだった。非常に良い曲がズラリと並んではいるのだが、彼女のシンガーとしての能力から想像と期待がふくらみすぎていたのかもしれない。

しかし、定評のある歌のうまさや声の良さももちろんだが、自分が特に揺さぶられたのは彼女の書いた詞であった。特にこのアルバムのラストの3曲は繰り返し聞き、歌詞を読み、そこに込められた感情に何度も思いを馳せてみたりした。

どうやらこのアルバムは、ライブを意識してなるべく生音を大切にして作ったものだという。なるほど、物足りない感はどうやら作りこまれた音楽に耳が慣れてしまっているからかもしれない。
よし、それならライブに行こう。

というわけで、「Sing a Song Tour 2010」の最終公演会場となる、SHIBUYA-AXでのライブのチケットをゲット。
「23歳女性シンガー」、「渋谷」、「オールスタンディング」、「ソウルロック」という不慣れな言葉が並ぶライブに、単身で乗り込むことになったのである。

ライブが終わっての感想は…。

スゴい!最高!素晴らしい!
2時間超えの20曲超え。なのにまだ聞きたかった。ここまで思えたライブは初めてである。オールスタンディングで2時間超のライブなんて絶対に途中で疲れて帰りたくなるのに、足が棒になっても腰を痛めても、帰りの電車がなくなってもいいからもっと歌ってほしい!歌ってほしいんやで〜!と思ってしまった。

さきほどの3曲、『Sotsugyou』、『THANK YOU』、『あいのうた』だけじゃなく、どの曲も思いがこもっていて素晴らしい。ビートルズの『Get Back』やジャクソン5の『I Want You Back』などのカバー、そして生で聞く『Cry No More』や弾き語りの『優しい赤』では、魂を完全に持っていかれてしまった。

心地よく、うまく、キレイに、そして簡単に歌ってしまうだけではないカッコよさが彼女にはある。アカペラの「サービス」もあれば、パワフルな曲ではその場に倒れてしまうんじゃないかというぐらいシャウトし続ける。そして、力が抜けてしまうようなあまりにも気さくなMC。完全にハマってしまった。

そして2010年の年末、最新のミニアルバムと、ライブを収録したDVDが発売された。
このミニアルバムがまたすごい。何を聞いたらいいか迷ったら、まずこのミニアルバム『Regrets of Love』をオススメする。彼女の売りである「パワフルさ」もさることながら、Charaの「ミルク」をカバーしてみせるなど、私が勝手に期待している「sweet」な歌声のほうへとその幅を広げているのである。

そしてライブDVD。これは自分も参戦したあのSHIBUYA-AXでのライブを収録したものである。そしてなんと! お恥ずかしながら、客席にいるわたくしが見事に映ってしまっております…。まったくノリノリには見えず、まるで映画『タクシードライバー』で大統領候補を暗殺しようと狙っているデ・ニーロのように凝視しておりますが、心は震えておるのであります!

彼女の歌声は間違いなく神様から授かったものである。しかし、その表現や歌詞、パフォーマンスはまだまだ発展途上にあると思う。年齢とともにこれからまだまだ進化していくことは間違いない。

「天才が見せてくれる発展途上ほどワクワクするものはない」

彼女を見ていて心底そう思うのである。
そんな彼女のピークはまだまだこの先、20代後半から30代、あるいは40代50代なのかもしれない。今後も期待は尽きないのである。

自分には彼女のようなズバ抜けた才能もなく、平々凡々な人間な上に、彼女よりも随分と年上だが、その歌、インタビュー、パフォーマンスから、いろいろなものを学んでいるつもりである。

どういう壁があり、どう突破してくのか。才能を生かすも殺すも彼女次第。凡人ではない者の選択が楽しみである。

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