つよし〜!!


久しぶりに長渕のライブに行った。

もう10年以上行ってなかった。その間にリリースされたアルバムはすべて購入し、聴きこんではいたものの、昔ほどの衝撃が走るアルバムはなかった。だからライブにも行かなかった。
長渕が変わったのか、自分が大人になってしまったからなのか…。

ところが昨年(2010年)11月にリリースされたニューアルバム『Try Again』を聴いて、久しぶりに心を揺さぶられたのである! こんな衝撃の長渕アルバムは久しぶりだ。これは行かねば、ライブに行って聴かねば〜!!

というわけで、ライブのチケットを取ろうとしたものの、すでにすべて売り切れていた。
すると、追加公演決定との情報が…。
よし! これや!
発売日当日はウェブ注文しようと、朝からパソコンの前で待機していた。ところが、いざ発売時間になると全くアクセスできなくなった! 長渕ファンがみんな一斉にアクセスしている! SS席は取れない! こうなったらS席だ!

そして当日、会場となる原宿の代々木体育館に向かったのである。

あぁ、久しぶり、長渕のライブはほんとに久しぶり。
そう思いながら原宿駅を出て歩道橋を渡ると、すでに会場付近でファンたちが長渕ソングを大合唱している!
長渕のような格好をして、ひたすら長渕の歌を歌っている「小長渕剛」がたくさんいる! これぞ長渕ライブ!
昔行った時もこんな感じやった、うん、大阪城ホールやったけど。

そして会場の入口前にはズラっと長渕グッズのお店。ほうほう、タオルにTシャツにカレンダーに、なんじゃこりゃ? レディース参戦セット? ポーチに小物がついたセットらしい。4800円。ぶっちゃけお客さんのほとんどは男性だが、これを見て興奮を隠しきれない女性もそれなりにいたりする。

いいね〜、楽しいね〜、と思いながらブラブラ見ていると、気がつけば開演10分前。こりゃいかん! 入口は行列だ! 間に合わんぞ!

なんとか入った。開演まであと5分。よしトイレに行こう。
そう思って行ってみると、さすがは長渕ライブ、女性トレイには誰も並んでいないが、男性トイレにはこれでもかというほど長蛇の列! あ〜しまった! 予想できたはずなのに! 今度こそ間に合わないじゃないか! このまま席に着くか? いや、ライブの途中で行きたくなったらどうする! え〜い、ここは並べ! お前が並べ〜!

思いのほかサクサク進み、トイレから出てきたのは開演時間ピッタリの6時だった。ものすごい歓声が聞こえたためあわてて客席に行ったが、長渕はまだ出ていなかった。待ちきれないファンが歓声を上げたらしい。

席に座って客席を見渡す。あちこちから「剛コール」が起こっている。みんなその時を待っているのだ!

すると照明が消えた! 開演だ!
白幕に映像が映し出された。やたらとカッコいい長渕!
それが終わると同時にバンドメンバーが登場。
そして、待ってました! 我らが剛の登場だ!

いきなりガツンとやられた。一曲目から、今回のアルバムで最もハードな『絆』が来た。
そして今回のアルバムのベストソング『Success』が続く。のっけから惜しげもなく怒涛のように歌う長渕。
『女神のスウィング』『ブルームーン』『知らんふり』、そしてちょっと前のアルバムからあまりにも大好きな『くそったれの人生』『電信柱にひっかけた夢』『泣いてチンピラ』!
立ちっぱなしで拳突きあげっぱなし。休まる時がない。いや、休んでる場合じゃない。
そして『勇次』に『とんぼ』に『乾杯』! 中でも久しぶりに聴けて嬉しかったのは『ひざまくら』『明日へ向かって』、そして最も心が震えたのは『逆流』だ! その歌詞に、昔聴いていたときとはまた違う感情が押し寄せてきた。

「奴がブーツのボタンをはずしていようと 奴が人の生きざま馬鹿にしようとも
一歩前のこの道を行かなければ だって僕は僕を失うために生きてきたんじゃない」

毎日妥協して生きていないか?
やりたいことがあるのに無理だと言ってあきらめていないか?
人の顔色ばかりうかがって萎縮していないか?
流行りじゃないとか言い訳してスマートに生きてるフリばかりしてないか?
その1つ1つによって「お前」は失われていくんだぞ!

そう言われている気がして胸が締め付けられる!
そして、今日この場所で、10年以上もの時を経て、生きてる長渕と生きてる自分がまた出会えた、当たり前のようなこの奇跡!

気が付けばすでに開始から3時間。アンコールも含め、あっという間に終わってしまった…。
ぐったり疲れた。お客さんがこんなに体力を使うライブもそうないのではないだろうか。
しかし終わった後も、明かりがついて「本日の公演は終了しました」と何度アナウンスがあっても、ひたすら客席で「剛コール」を続けるファンたちがいる。ここまでの渇望感。

帰りに夜空を見上げると、ほぼ満月に近い月が煌々と輝いていた。
雲ひとつない空に、ぽっかりと穴が開いたよう。
日常生活でガチガチに固まってしまったお前たちの心に、今日、あの月のような大きな風穴をぽっかりと空けてやったのだ!
…なぜか、長渕がそう叫んでいる気がした。

原宿へと帰る道は、ライブ帰りの人でごった返していた。不意にその人波から離れ、フラフラになった足でちょっぴり遠回りしながら渋谷駅まで歩いていくことにした。長渕が歌ってくれた『くそったれの人生』を口ずさみながら。

♪群れから離れっぱなし ずっと離れっぱなし
遠回りのくそったれの人生
千鳥足でいつもの路地を♪

人づきあいが下手で、人と同じようにうまくやれない自分を、いつも励まし続けてくれた歌だった…。
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