グルと占いとKS



というわけで、バラナシの続きである。

沐浴している時に声をかけてきたインド人おっさんに連れられ、我々はインド占星術による占いを受けに行った。

何やらグルグルと入りくんだ細い道を遠回りさせられる。
KSが簡単に、「ここやったらこっちの道通った方が近いぞ。迷わすためやな。俺らだけで二度と来られへんようにするためやな!」と、おっさんの意図を見透かす。
おそらく何かあった時に、後からどなりこんで来られないようにするためだろう。
確かに旅行者が一回通っただけでは覚えられないルートであった。
怪しい、怪しいぞ! とKSの防犯レーダーがしきりに反応していたが、構わずついて行くうへだゆふじであった。

そして、おっさんの言うグルの家に着いた。
ところがそこは、意に反して特に怪しいわけでもなく、奥へ案内されるわけでもなく、拍子抜けするぐらい開けっぴろげな場所であった。
出てきたグルは、これまたなんら怪しい風貌でもなく、意外と若かった。

どうやらKSの不安も杞憂に終わりそうである。

そしておっさんが状況を見守る中、早速、うへだゆふじから観てもらうこととなった。
まず生年月日と生まれた場所・時間を言い、それに基づく、インド占星術によるホロスコープを書いてもらう。
西洋占星術のホロスコープと似たようなものであるが、血液型や星座のように、「この人とこの人は同じ所に分類される」というものではない。
自分のホロスコープは自分だけのもので、他の誰とも一致するものではない。
生まれた日が同じでも時間が違えば変わってくるし、また時間が同じだとしても、生まれた場所が違えば、描かれるホロスコープは厳密には違うものになる。

さて、占いはそれプラス、手相や顔相も見られながら行われた。
グルはホロスコープを書きながら、またうへだゆふじの手相を見ながら、しきりに「interesting, interesting…」これはおもしろい、興味深いぞ、と何度もつぶやいている。
そ、そんなに興味深いっすか?? などと思っていると、いきなり、「君は長男だ。そして性格は・・・」

おいおい、ちょっと待て。なんで長男って分かってん?
「ホロスコープを見れば分かるのだ。」
ほんまかいな。すごいな。

生まれた時間・場所で分かるのだという。
とすると、その時間と場所で生まれる者は絶対に長男なのである。
いや、長男として生まれることが先に決まっていて、その場所と時間を選んで生まれてくるのかもしれない。

う〜む、よく分からない。

そして性格。「理想主義でしかも頑固。基本的には真面目。」
うむ、そ、そうかな。
「人の下で働くのは向いてないな。自分で何かやった方がいい。」
う、うむ、そうかも。
「しかし君、最近やりたい事を見つけたね。」
え?

ちょうどこの時期、うへだゆふじは舞台公演を2回経験し、次なる公演の予定もあり、お、この事か、と納得させられたのである。
そんなことまで分かるのか。
というか、生まれた場所と時間でそこまで決まってしまうのか??

その他、かなりの確率で当たっていたように思う。

とりあえずニセ占い師の常套句として、「む〜! あなたは今迷ってますね!」という言葉がある。
当たり前やん、迷ってなければ来るわけないでしょうが。
しかし、このグルは大胆にも「やりたい事を見つけたねっ!」と言ってはばからない。
話半分に聞いてはいたが、初っ端から長男であることを当てたり、その他もろもろなかなかおもしろく、ついでに人生上の色んなアドバイスまでしてもらい、拍子抜けするぐらい健全であった。

ただし1つ、結婚する年齢だけは当たらなかった。
もう過ぎたよ、グル。

そしてKSの番になった。
しかし今度は、手相を見ても興味をそそられなかったのか、グルは終始無言。
ひたすら黙々とホロスコープを書いている。
なぜだろう、うへだゆふじの時はあんなに流暢な英語で気さくに話してくれたのに、KSの番になると急に寡黙な男になり、トツトツとしゃべり始めるのである。

「ま、女性にもほどほどに縁があったな。」とグルが言う。
しかしKSにそんな縁はあまりにも少なかった。
そこでKS、「いや、そんなになかったんですけども・・・。これからはどうですかねぇ?」、と質問する。
しかしグルはそれに答えず、「そして君は真面目な性格だな。」などと続ける。
KSは「なんで?」と、うへだゆふじの方を見る。
うへだゆふじ、笑うしかない。
結局、KSの占いは瞬く間に終わってしまった。
可愛そうなKS。
グル、急に眠くなったのか?
興味の無いホロスコープはどうでもええんか?
そして職場放棄か?

この時もKSが結婚する年齢を言われたのだが、彼もまた独身のままその年を過ぎようとしている。
やっぱりただのウソつきなのか???

しかし、うへだゆふじはその後、日本に帰って四柱推命なる占いで観てもらったが、だいたい似たようなことを言われた。
そういった生年月日のようなもので出てくる情報は、同じようなものらしい。
それを占い師がどう解釈し、どう伝えるか、その辺が腕の良し悪しと言えるようだ。

しかし、ということは、生まれ落ちた時点で、その人の人生は決まっているという事になる。
じゃあ何をどうあがいても変わらない、全て決まっているのだから、という考えに陥りそうになる。
努力しても無駄じゃないか、どうせ決まっているのだから。

いやいや、ところが、である。
ところが、どうやら人間は自分の努力次第で、
いかようにも運命を変えることができるようなのである。

人生は、「運命」と「努力の余地」、両方を兼ね備えているようである。
ゆえに占いは、過去についての的中率はすごいものはすごいが、未来についてはいくらでもはずれるのである。
つまり、結局は、自分次第なのである。
料金を払い、またおっさんの案内で元の場所へと戻る。

なかなか興味深いインド占いであったが、KSは「同じ料金やのに、上田の方が長かったぞ。」と、イマイチすっきりしないようであった・・・。

次回、またまたバラナシ編・Part4に続く・・・。
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