ありがたやありがたや


ポカラからバスに乗って半日、ネパールの首都・カトマンズへと着いた。

タメル地区に宿を取り、早速王宮へと向かう。
ネパール王宮・・・。
今から数年前、結婚に反対された皇太子が国王を射殺し、自分も自殺したという痛ましい事件があったところである。
もちろん、この時は全く関係ないのだが。

王宮近くに来ると、色んな店で賑わっている。
色とりどりの衣服やカバン、雑貨などが並んでいる。
そしてそこを通り抜けると広場があり、サドゥー(修行僧)が腰にふんどし一丁の格好で頭を床につけ、逆立ち状態で何やら念仏を唱えていた。
ヨガをやっているらしい。
何分も何十分も同じポーズを続けている。
しばらくすると、足のポーズを変えたりする。
かなり大変な作業である。

しかし、本物のサドゥーがこんな所でヨガをやるのだろうか??
そう思ってよく見ると、小銭を入れるための空き缶がそばに置いてあった。
見世物? もしくは托鉢? といったところか。

しばらく見ていたが、ずっと逆立ち状態である。
それはそれで、かなり大変な修行であった。

そしてそこを通り過ぎると、出ました、蛇使いの見世物!
笛を吹くと、コブラが壷からニョロ〜っと出てくるアレである。

これ、ほんとにあるんですねぇ。

あんまり近づくとお金を要求されそうなので、少し遠くから写真に収めておいた。

さて、そこを過ぎてさらに奥へと行くと、クマリの館がある。
クマリとは、ネパールの女神のことである。生き神様である。
まだ3歳そこそこの女の子が選ばれ、神として崇められる。

クマリになるには、たくさんの肉体的条件がある。
それらを全てクリアする子がクマリとして選ばれ、クマリの館に家族ともども連れてこられ、そこに住み、全ての生活を保障される。
クマリとなった女の子は、特別な催しがある時以外、外へも出ず床へも置かれないほど丁重に育てられ、食事や着替えなども全て世話される。
ただ神として崇められるのである。

しかし残酷なのは、クマリが10歳を過ぎた頃、初潮を迎えた時点でただの人間となり、俗世に返されるということである。
物心つく前から自分で何もしてこなかったクマリは、その後、普通の生活ができずに困難に陥るという。
そんなこととは関係なく、また次のクマリが探され、決められるのである。
選ばれた方も大変光栄に感じ、喜んで受け入れる。
そうやってネパール人のクマリ信仰は、脈々と続いていくのである。

その館の庭に入ってみた。
運が良ければ、上の部屋からクマリが出てきて顔を見せてくれるという。
しばらく待っていたが、一向に出てくる気配がない。
しかし、絶対出てきてくれると意味もなく信じて疑わなかった我々は、しつこく居座ってみた。

すると、団体の旅行者らしき人々が入ってきて、何やらお布施のような物を置き、ガイドらしき人が上へ向かって声をかけた。
すると、ひょっこり女の子が出てきた。
クマリである。
少し恥ずかしそうに愛想をふりまき、また中へと入っていった。

あまりに突然のことで、しかもありがたみがよく分からなかったが、とりあえず手を合わせ、「ありがたや、ありがたや」・・・。
作戦成功(?)であった。

その後、王宮周辺をウロウロしていると、少し背の低い、まだ20歳そこそこのネパール人青年に、日本語で声をかけられた。
日本語を勉強中なのだという。
その顔がなぜかKSの弟にそっくりだったので、妙に親近感を覚え、少し周辺を案内してもらうことにした。
気さくに流暢な日本語で話してくれる。

ひとしきり案内してくれた後、不意に「こんな歌知ってますか?」と彼が歌いだした。
「パェーデシー♪ パェーデーシー♪ ジャーイヒーン!♪♪」
「おお!」 二人して驚いた。
というのはこの曲、インドでもネパールでも、どこに行っても街中でしょっちゅう流れているのを聞くのである。
タイトルなんていうんやろな〜、最近あれ聞かんと落ち着かんな〜、などと二人で話していた、まさにその曲だったのである!

早速彼を連れてカセットテープ屋へ行き、その曲が入ったものを探してもらい、購入した。
こちらで大ヒット中の映画のサントラであった。
世界一の映画大国・インドでは、ヒット曲もほとんど映画から生まれるという。
何かひっかかっていたものがとれたような、欲しかったものがやっと手に入ったような、妙な満足感に浸る我々であった。

彼にお礼として食事をおごった後、我々は二人してボダナートへと向かった。
塔に、紫や赤の色を使って「目」(顔?)が描かれてある寺院である。
街中をオートリクシャー(三輪バイクタクシー)で走っていると、いきなり眼前にドーンと登場する。

ストゥーパ(塔)のまわり一体を、チベット密教の経文が彫り込まれた、何百個もの筒状の物体(マニ車)が取り囲んでいる。
さわるとカラカラ回る。
みんなこれを手で触って回しながら、時計回りに塔を一周していく。
なんでもこのマニ車を一回まわすと、一度お経を読んだことになり、何個も何個も回せば、それだけご利益があるとされている。

みんなを真似て、我々もカラカラ回しながら一周した。
ほとんどご利益マニア状態の二人であった。

この頃には、インドやネパールでの物凄い車の排気ガスに喉をやられ、咳が止まらないようになっていた。
この日も町中をウロウロしたせいで、さらに悪化、咳が一層ひどくなり、夜もなかなか眠りにつけないほどになっていた。
お腹の調子もあまりすぐれず、カレーだともたれるのでモモ(ネパール餃子)ばかりを食べていた・・・。

次回、カトマンズ編Part.2へと続く・・・。
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