インドの洗礼


バンコクから飛行機で4時間半、タイ国際航空に乗り真夜中のデリーに着いた。
機中では偶然にも、インドに何度も来ているというベテランの日本人女性と隣り合わせになり、話しているうちにいつの間にか着いた。

暑さにも慣れ、万全の態勢でインド入り! と言いたいところだが、バンコクでは夜中まで開いているレストランなどがあり、楽しんでいるうちに寝不足となっての搭乗。
そんなボーッとした頭を抱えながら、デリー空港に降り立ってしまったのである。

さて、インドの第一印象は・・・。

意外に寒い。
バンコクでは湿気を含んだヌメッとした空気に包まれたが、予想に反してデリーは寒かった。
やはりインドと言ってもこの時は2月、さすがに朝晩は冷えるらしい。
そしてどことなく暗い。
夜中だから暗いのは当たり前だが、電灯が少ないのとインド人の肌の黒さが相まって余計に暗く見えるようだ。

空港バスらしきものがあったが、中はもう一杯である。
大きなバックパックを抱えた我々男2人が、入れそうもなかった。
さてどうしようかと考えていると、タクシーの運転手らしき男に声をかけられた。
濃い濃い、濃い顔である。
運賃を聞いたのだが、少し高い気もする。
しかしまだインドの基準が分かっていないのでよく分からない。
するとこの運転手、「ガイドブックを見てみんしゃい。だいたいそれぐらいだがや。」と英語で答える。
他に街へ行く方法もないので、とりあえず信じて乗ることにした。

おしゃべり好きで親切なおっさんだった。
ホテルを決めていないと言うと、とりあえず観光局へ行こうと言う。
こんな時間にやっているのか、やるなインド、などと思っている間に到着。
タクシーをそこに待たせたまま、降りて中に入ってみた。
西洋人バックパッカーズに混じって、日本人の姿も見える。

順番を待っていると、中から出てきたのはなんと飛行機で隣り合わせたおばちゃんであった。
これからこの観光局のツアーに行く、といってそのまま車に乗って駅へと消えていったのである。
大丈夫なんか、おい。

そして我ら男2人の番になった。
聞くと、今は選挙中だから街は閉鎖されているという。
今このまま電車に乗って、我々が運営するツアーに参加した方がいい、その方が何も考えなくていいし楽だ、
などとインド人観光局のおっさんが言うのである。

え〜!
そんなツアーがいややから航空券だけ買って自由旅行にしようと思って来たのに!
しかも街へは入れへんと?
選挙中にはいろいろあるとは聞いてたけど、まさかそんな時にバッティングするとは・・・。

とりあえずホテルの情報も聞いてみることにした。
提示されたのは、・・・なんと日本円にして1万円のホテル!

「閉鎖されているからここしかないんだ。」

アホな! ここインドやろ! そんな高いことあるかい!
わしらバックパッカーズやぞ!
ウソやな。これはウソやな!
勢いよく断ろうとすると、なぜかおっさんの形相がガラリと怖くなっている。
見ると周りにはいつの間にか、インド男がぐるりと取り巻いているではないか!
「それ以外ないぞ。」と迫られる。
「早くしろ。後ろで人が待っている。」

む〜!

このまま外に出されても、どうしていいか分からない。しかも真夜中。
旅費を削るため、真夜中の到着便にしたのが間違いやったか?!
言ってても仕方がない! ツアーは断ってホテルだけとろう!
仕方なくお金を払い、またタクシーに乗ってホテルへと向かった。

・・・到着。
もちろん1万円もするようなホテルではなかった。
完全にボラれている!
しかし今日のところは仕方がない、おとなしく泊まって明日からどうするか考えるべ。
あのベテラン女性もツアーで行ってしまった。ほんまに閉鎖されてるかもしれん。
こっちの準備不足・認識不足もあったからな・・・。
そう思って部屋まで送ってくれた運転手に礼を言おうした。
すると、そこでまたこいつの態度が豹変するのである!!

「チップはどうした?」
やると、「こんなので足りるか」。
おいこら。お前までボるつもりか。
「待っとったんやからもっと金出せや」(←英語で言ってやがる)。
さすがにこれにはキレそうになり文句を言うと、濃い顔をさらに濃くしてケンカ越しに迫ってきやがる。
こういう時は日本語でもいいからキレた方がいいと聞いていたのでうへだゆふじは珍しくキレたのだが、事態を丸く収めたいKSが割って入った。

「もうええやん、お金払ったら済むんやし。」

その考えもどうかと思うが、KSが払うというならそれで良しとしよう、そう思って気を鎮めた。
KSから金をもらった運転手は急に笑顔になり、また元の愛想のいいおっさんに戻って帰っていった。

これがインド人か・・・。

ムカムカしているとKSが近づいてきて手を出した。
「何やねん?」
「・・・半分出せよ。」
KS、お前もか。

悔しい思いをしながらベッドに横たわった。
何やらフロントの方からどなり声が聞こえる。
他にもボラれた奴がいて文句を言っているのだろう。
もう早よ寝て早よ起きて出て行こ・・・。

到着1時間にして最悪のスタート。
しょっぱなからインドの洗礼を浴びた夜だった・・・。

結局、選挙があったのは本当らしかった(期間中には本当に爆弾テロなどがあって危ないことは危ないらしい)が、街が閉鎖されているというのは嘘だった。
そして何日か後、別の町でこの観光局で見た西洋人に出会った。
試しに聞いてみると、彼もタクシーの運転手に観光局に連れてこられ、ツアーとやたら高いホテルをすすめられたのだという。
結局彼は勇敢にも全て断って出てきたらしいのだが、確認のため次の日、同じ場所に行ってみると、そこには観光局の看板も何もない、無人の廃墟が立っていただけだったという。

ニセ観光局。インドではこんなこと、日常茶飯事らしい。
とにかく騙されないようにすることが必要なのであった・・・。

次回、デリー編Part2へと続く・・・。
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