シュール・ドライブ


インド・・・。
悠久の大地、神秘の国。

最新の科学技術で核を保有する反面、民衆は貧困にあえいでいる。
聖人・聖女、それに反して犯罪・貧困・病・死・・・。
あらゆる清濁全てを併せ呑む、まさにガンジス川に象徴されるような国。
憧れと同時に多大なる嫌悪感をももよおす国。

航空券を買ったものの、行く前から無事乗り切れるかどうか不安で眠れなかった。
旅行情報にも色んな危険性について触れられている。
強盗に爆弾テロ、睡眠薬を使っての窃盗に誘拐、警察もグルになっての麻薬犯罪・・・。

それにも拘らず、なぜ行くのか? 行きたいのか?
行きたいのである。
なぜか長年、インドな世界に身を置いてみたかったのである!

さあ、いよいよそのチャンスが訪れた。
いざインドへ!

・・・と早速言いたいところだが、その前にまずは経由地のタイはバンコクへと向かわねばならなかった。

というわけで、今回と次回は[序章]ということで、「バンコク編」をお送りいたします!!


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バンコクへ行くのは2度目だった。
友人のKSも2度目。1度目はお互い違う友達と行っていた。

「安らぎの国・タイ」などという宣伝文句が踊るが、いやいや全く安らげることのないバンコク、灼熱と喧騒の地・バンコクである!
2月というのに気温は35度。
飛行機を出ると、湿気を含んだムワッとした空気が体を包む。
暑い暑い。
でも寒い日本から来たところで体が慣れない。
わけもわからずトレーナーを着たままでウロウロしていたりする。

着いたのは真夜中。
空港バスに乗って市内へ出ようかと思ったが、そこで韓国人らしき旅行者に声をかけられた。
見ると向こうも2人組み、一人はなぜかものすごい長髪に短パン、ズタ袋一丁の姿である。

「Where are you going? Kaosan street? Share a taxi with us.That’s cheaper.」

要するに僕たちと君たち、4人でタクシーに乗ってワリカンしようぜ、てな提案である。

その長髪男、かなり旅慣れているのか2台3台とタクシーを渡り歩き料金の交渉をしている。(料金は交渉制だったりする)。
よく見ると、ゾウリ履きである。

一緒に居たKSは「やめとこ、どこ連れてかれるかわからんぞ。」と警戒心を強めるが、短パンの連れの男が、図体はデカイのだが気弱そうで一言もしゃべらない。
ゆえに、2人とも全く威圧感がなく、危険な匂いも一切しない。
ここは独自の、そして何の理論的根拠もないうへだゆふじの勘で、「ま、大丈夫やろ。任せといたらええんちゃう。」などと話していた。
すると短パン男がペタペタと戻ってきた。
聞くと、格安料金でタクシーに乗れることになったという。
おかげで安くバンコク市内へと出られそうだ。
4人で乗り込み、バックパッカーズ御用達の安宿街・カオサン通りへと向かったのである。

道中見える景色は初めて来た3年前と違い、きれいに整備されている。
そういえば3年前は、・・・なんか怖かったなぁ・・・。
見えるもの全てが異様な感じがして、いやぁ、これ外出られるやろか、明日街中歩けるやろか、などと不安を抱き、友達に「悪いけど、俺ホテルから出られへんかもしれんわ・・・」とホザいていたのを思い出した。
でも次の日、ウキウキで外出ていったけど・・・。

そんな事を考えていると、短パン男が自分の韓国のカセットを取り出し、かけてくれということになった。
バンコクの街を韓国語の歌を聞きながら日本人が走っている・・・。
なんともシュールなドライブとなった。

KSの不安をよそに、タクシーは無事カオサンに着いてしまった。
真夜中なのに各国の旅行者が入り乱れ、あふれ返っている。

そう! これこれ! この雰囲気がええねん!!

そう興奮したのも束の間、どこの宿へ行っても満室だと言われる。
ありゃ、カオサンで見つけられへんなんてありえへんぞおい、ここであかんかったら他行っても・・・。
どないしよか? どないしたらええんやろ?
今日は寝るとこないんやろか〜ぁ! え〜!

するとさっきの短パン男はもう宿を見つけたのか、レストランでタバコ吸ってやがるのが見えた。

む〜! ほおぉ〜!

うろたえるエトランゼに、別の方向から救いの手が差し伸べられた。

「There’s my hotel over there. I’ll take you.」
ちょっと行ったとこにオラのホテルがあるべ、連れてったるべ・・・。

見ると、ちょっぴり怪しいタクシーの運転手。
・・・う〜む、この際仕方がない、料金を値切り、ついでにそこまでのタクシー代をタダにしてもらい、そのホテルへと向かったのである。
(なんてひどい日本人! と思われるかもしれないが、これぐらい当たり前なのである。むこうも高くふっかけてくるのだから、こっちも安くふっかける。これまた旅の醍醐味だったりする。)

そしてホテルに着いた。
KS曰く、「・・・ここ、連れ込みホテルちゃうか・・・」
ベッドは1つ、寝っ転がると見えた天井は一面ガラス張り・・・。

む〜!!

とりあえずガマンガマン、1泊して次の日、再びカオサンへと宿を探して歩くのだった・・・。


次回、バンコク編Part2「ムエタイ、国歌・国旗について」へ続く・・・。
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