無駄なチャレンジ


夜。バラナシへ向かう寝台列車に乗るため、アグラの宿を出た。
我々2人とも絶不調。
食あたり(?)になった体を引きずりながら、なんとか駅へと到着した。
2人ともフルーツならなんとか食べられるようになっていたので、そればかりを食べていた。

バラナシまでは12時間以上かかる。
昼間はかなり暑く、電車の中は蒸し風呂のようになるだろう。
そんな苛酷な状況の中、このような体をひきずって無事に到着できるだろうか。

我々の不安をよそに、時間通りに来るはずのないインドの電車がほぼ定刻に到着。
飛行機でもバスでも、とにかく何時間も遅れるというのが事前のインド情報だったのだが、あまりの評判の悪さに政府が改善に乗り出したのか、わりと何でも時間通りに来ていた。
そういえば空港にもホームレスが大量にいると聞いていたのだが全くそんなこともなく、逆に消毒液のにおいが鼻をついた。

インドも努力してるのか・・・。

疲労でボーッとした頭でそんな事を考えていた。

電車に乗り込むと、驚いたのがベッドが3段になっていた事だ。
2段だとばかり思っていた。
しかも自分は一番上。
すぐ上が電車の天井なので、ベッドの上に座ることもできない。
頭が上にあたるのである。

何かしようと起きても、常にかがんでいなくてはならない。
辛い。

そしてベッドとは名ばかりの、ただの板である。
痛くて辛い。

仕方がないので寝袋を広げ、その上に寝る。
じっとりと暑くて辛い。

そしていよいよ出発、KSも早くも横になって眠っていた。

・・・時々駅に止まり、その度に目が覚めた。
物売りの、歌にも似た売り文句が遠くから聞こえてくる。

あー、お腹すいたなぁ・・・。
ってことは俺、食欲あるのか、じゃあまだましか、などと考えながらひたすら眠っていた。
その後はもう泥のように眠ってしまったようだ。

目が覚めると明るくなっていた。
もうすぐバラナシに着くらしい。
驚いたことに、こんな状況での睡眠でも体調はだいぶましになっていた。
起きて寝袋をたたもうとするのだが、どうしても天井に頭が当たってうまく動けない。
やっとの思いで巻けたものの、ルーズに巻きすぎたらしくまた広げて巻き直す。あー、しんど。

そんなことをしているうちに、バラナシの駅に着いた。
KSも少し体調がましになっているようだ。

電車を降りる。暑い。

リキシャに乗る。暑い。

ホテルを探す。暑い。

もう何をやってもグッタリである。

それでもなんとか、安くてきれいなホテルを見つけた。
残念ながらガンジス河からは遠い。

そう、ここはヒンズー教の聖地、ガンジス河沿いの町バラナシ(ベナレス)である。
ヒンズーの人達は皆このガンジスのほとりで死に、焼かれ、その遺灰をガンジスに流してもらいたいと願っている。
そうすることでこの苦しい人生の輪廻から解脱することができ、永遠の平安を得る事ができると信じている。
そんな聖地を見ようと、食事をとり少し元気になった我々は早速河のほとりへと向かうことにしたのである。

リキシャに乗ったのだが、途中から大渋滞に巻き込まれ全く動かなくなった。
ガンジスに向かう道は、タクシー、乗用車にリキシャ、人に牛までいてあふれかえっている。
とにかくバラナシに限らず、あちこちに牛がのさばっていて邪魔で大変である。
牛は神の使いと信じられており、神聖視されているので自由に生きている。
いや、正確にはそれぞれ飼い主がいるらしいのだが、街中で放し飼いである。

しかしいくら神の使いといっても、道路の真ん中に寝そべられて邪魔で仕方がない時は、みんなその牛の尻を押す、たたく。
牛も、「もう、仕方ないなぁ」というように、本当に仕方なく立ち上がって動いたりしている。

我々は全く進まないリキシャを降り、歩いてガンジスへと向かった。

さて、このガンジス河については次回詳しく書くとしよう。
我々は次の日、このあまりにも汚くて聖なる河に、どっぷり浸かることになるのだが・・。

乞うご期待。

さてこの日の夜は、いい物を食べて元気をつけよう! と、
この付近でちょっぴり有名なホテルの1階にあるちょっぴり豪華な店へと、
わざわざリキシャに乗って向かった。
今までの旅では絶対入らないような所だが、
今日ばかりはいいだろう、そう思ってメニューを見た。

通常、カレーと一緒にナンを頼む。
ランク下だと、ナンではなくチャパティという、パリッとしたものしか
なかったりするのだが、この店は色んな種類のナンが取り揃えられていた。
ふっくらといかにも上品そうなバターナンを頼んでみたりした。

こういう時、メニューに色んな、中には意味の分からない得体の知れないものまであったりすると、KSは血が騒ぐのか必ず何かチャレンジしてしまう。
この時もよく分からない、聞いたこともないようなカレーを頼んだ。

うへだゆふじはマトンカレー。
少し辛いがかなりうまい。

やっぱり高いだけあって違う、これなら体調も回復しそう、
そう思ってKSのカレーを見て仰天した。
なんと真緑である。

緑のカレー・・・。

おそらく野菜の色なのだろうが何なのかよく分からない。
食べてみると・・・。

これまたよく分からない。
うまいかまずいかというのではなく、あえて表現するなら、
・・・技のデパート舞の海が、色んな手を試したけど結局土俵際でうっちゃり負け、のような味(分からんか)。

KS、「ん〜・・・」と首をかしげながら、そして大量に汗をかきながら、
せっかく頼んだのだからとムリヤリ平らげようとしている。

こんな所まで来てうっちゃり味のカレーを食べるとは・・・。
下手にチャレンジしなくていいのに。

汗を拭き拭き、水を大量に飲みながらムダにがんばるKSであった。

そんなこんなでまた宿に戻った。
うへだゆふじは復活のきざしを見せたが、
KSの体調は相変わらずパッとしないようであった・・・。

次回、バラナシ編Part.2に続く・・・。
プリンタ出力用画面
友達に伝える

前のページ
インドらしくなってきたなぁ…?!
コンテンツのトップ 次のページ
ガンジス