真夜中の輪唱


夜中、あまりにも腹が痛くて目が覚めた。
いや、正確に言うと何度も覚めていたのだが、もうどうにも眠り続ける事ができなくなり、トイレへと駆け込んだ。
昼間動いている時はまだましなのだが、なぜか夜になるとゴロゴロするのである。

・・・トイレですさまじい音を発してしまった。

あまりにすさまじい音が続くので、寝ているKSが起きるのではと思ってしまう。
それほどひどかった。自分で自分のド肝を抜いている。
すると、なぜか自分の音以外のものが時々輪唱のように乱入してくる。

となりである。

隣の部屋のトイレからである。
こんな時間にとなりの旅人も苦しんでいるのか・・・。
ブ〜ピ〜、ブ、ブ〜、ピ〜ピ〜・・・
やはりこれぞインド・ネパールの風物詩?! というわけではないが、真夜中のステレオ効果をかもしだす旅人たちであった。

いきなりお下品なお話からおスタートしてしまった。
気を取り直してカトマンズの続きを書こう。

我々は次の日、丘の上のスワヤンブナートへと向かった。
これも前回書いたのと同様の、塔に目の書いてあるネパール寺院である。
途中、パシュパティナートというヒンズー教の聖地へと寄った。

そこはガンジス河の上流にあたり、やはりここにも火葬ガートがある。
川べりで布にくるまれた遺体が火葬されるのが見える。
バラナシで一度見ているので、もうさほどのショックはない。
炎があがり、布が燃え、遺体の足が見えている。
それを燃やしている人が、棒で真ん中の方にと動かしたりしている。
あとの灰は、やはり川へと流す。

ガンジス河に比べここは水量が少ないので、そこで灰がとどまったりしている。
何か深い思いを抱いて見ているわけではないのだが、ここでもインドの時と同様、なぜかボーっと見てしまった。

その後、スワヤンブナートへと向かう。
オートリクシャーに乗って向かったのだが、途中の坂が急でリクシャーのエンジンが止まりそうになる。
それでもなんとかプリ、プリプリと、かろうじて上へと登りきった。

巨大な塔である。またマニ車を回す。
ここは丘の上だけあって、下にカトマンズを一望できる。
その景色はやはり、日本の田舎のようであった。

さて、ここネパールにおいて1つ買おうと思っていたものがあった。
タンカ(チベット密教の仏画)である。
色んな神様や、マンダラの絵などがある。
ちなみにインドやネパールでは、神様の絵が芸能人のブロマイドと同じように並べられ売られている。
移動の時に乗った長距離バスの運転席にも、シヴァ神の置物が供えつけてあって、運転手が道端で子供が売っている花輪を買い、そのシヴァ神の置物にかけたりしていた。
川で乗る小船にも神様の絵がたくさん貼り付けられてある。

この旅行中も、特にネパールに入ってからタンカの店を見る事も多く、その度に中に入っていろいろ見ていた。
安いのだと本当に安いのだが、やはり絵のレベルが低い。
良いものだと、簡単に日本円で3,4万はする。
とても買えない。

だがよく見ていると、いいなぁと思うものとそうでないものの境目が、ちょうど日本円にして1万円ぐらいだと分かってきた。
そこでそれぐらいに狙いを絞り、あちこちを見ていたのである。

この日も帰り際、またタンカの店を発見。
早速中に入ってみる。

入るとすぐにチャイをすすめられる。
ここでも、「Yes, please」と簡単にもらおうとするうへだゆふじに、KSが警笛を鳴らす。
「あんまり簡単にもらう言わんといてくれ。睡眠薬でも入ってたらどうすんねん」。
ごもっともである。注意しすぎるということはない。

しかし外から丸見えの、ガラス張りのこの店で、しかも他にお客さんもたくさんいる、そんなところでそんな・・・。
「うん、分かった」などと言いながら、出されたチャイをグビググビ飲むうへだゆふじであった。

あれやこれやと店主が出してくれるのだが、やはりこちらが日本人ということで高価な代物ばかり見せられる。
ふと壁にかけてあるのを見ると、・・・なかなか良いのがあるではないか!
大きな蓮の花に座っている女神・グリーンターラーの絵である!
今まさに下界に降りて人間を助けようと片足を出している。
その絵のきれいさ、やさしさ、そしてインパクトに惹かれ、ス〜っとその絵の方に歩いていった。

気に入った!!

絵心のあるKSに、絵のバランス、細かい筆遣いなどのチェックをしてもらい、値段の交渉へと入る。
1万円を悠に切っている。しかし、ここはもう少し値切ってみるか・・・。
買いたいという素振りをひた隠しにしながら、店の主人と計算機の数字をにらめっこする。

やはり良い絵なのだろう、なかなかまけてくれない。
仕方がないので、少しまけてくれたところでこちらが折れて買うことにした。
丸めて包んでくれる時に他の絵にすり変えられる、などというだましのテクもあると聞いていたので、包んでくれるところを見たかったのだが店の主人は絵を持って奥へと入っていった。

あえて郵送にはせずに、持って帰ることにして、後でホテルで確認した。
ちゃんと注文した絵だった。良かった。

これで無事目的も達成、ネパール最後の夜ということもあり、今日は豪勢にステーキでも食おう! ということである店に入った。
なんのことはない、ただ安く肉を食わせてくれる店なのだが。
もとから物価が安いので、日本では考えられないぐらいの破格値である。
夜は少し肌寒いが、そのオープンエアな店でお酒も飲み、楽しんだ。

「あ〜、・・また明日からインドか・・・。」

インドが大好きなのに、またインドに入ることになぜかうんざりする二人であった・・・。

さぁ、次回からはいよいよこの旅のクライマックス、最終目的地のインドはカルカッタに移動します!!

お楽しみに!
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