インドらしくなってきたなぁ…?!


前の日、「明日は朝日に照らされるタージ・マハルを見よう」とKSと計画し、日の出前の時間に目覚ましを合わせて寝た。
暗いところから陽がさし、朝もやの中に照らし出されるタージはこれまた格別だという。

まだ真っ暗な中、目覚ましを止めて起きた。
ところが、横のベッドで寝ているKSが全く起きてくる気配がない。
そろそろ旅の疲れが出る頃か・・・。
夜中に何回もトイレ行ってたみたいやし、ひょっとしたら下痢でもしてるんやろか、そう思いつつKSに声をかけてみた。
すると、やたらはっきりした声で、「俺、ムリやわ」と言う。
「え?」
「夜中じゅう吐き気がして何回も吐いてもうた。」
「カゼか?」
「分からん。」

話しているうちにまた気持ちが悪くなったのか、起き上がってトイレにかけこむKS。
もう胃の中の物は全部吐いてしまったらしく、胃液しか出ないらしい。

するとKS、「俺寝てるし、一人で見に行ってこいよ。」

「うん。」

KSを一人置き去りにして、タージを見に行くうへだゆふじであった。

タージはやはり、何回見てもきれいであった。
飽きずにしばらく遠くから眺めていた。
どれくらい時間が過ぎただろうか、まだ朝食をとっていないお腹があまりにもグーグーいい出したので、帰ることにした。

ゲストハウスでフライドライスを頼む。
昨日の晩、KSが食べていたものだ。
正直言って、インドの米はにおう。
なぜだか分からないが、微妙にくさい。
それにも慣れたつもりだったが、このライスはさらに輪をかけてくさかった。
生ゴミを食らってるよう。

なんとかたいらげ部屋のトイレに入ると、何かが足の甲にパサッと触った。
な! ヤモリか! と思って見ると、お守り代わりに首から下げていたロザリオが、切れて落ちたのだった。

不吉。

とりあえず応急処置をして、また首からぶら下げる。
KSは相変わらず何も食べられない。
食べるとすぐに吐いてしまう。
しかしKS、「俺は大丈夫やから、1人でどっか行ってこいよ」と言う。

「うん。」

またしても1人で出て行くうへだゆふじであった。

ゲストハウスを出ると、前日、我らをここまで送ってくれたオートリキシャ(三輪タクシー)が止まっていた。
「どこ行くの? 乗りなよ」と、その運転手は英語で誘ってくる。
「ほら俺だよ! 昨日送ってやっただろ? 俺の名前、覚えてる?」
「え〜、・・・タノムサク。」
「ラジューだよ! ラジュー!」
朝からテンションの高い奴である。

とりあえず行きたいと思っていた、ジャマー・マスジット(イスラムのモスク=礼拝堂)へと向かった。
着くとラジュー、「この後もどこか行くんだろ? 待っててやるから行って来いよ!」と言う。
「いいって、どうせまた変な土産物屋にでも連れて行くんやろ?」
そう思い、待たなくていいと断ったのだが、どうしても待つという。
料金は後で一括でもらうから、と言ってお金も受け取ってもらえない。
ま、待つって言ってるし、待たせておけばいいか、と思い、モスクの中へと入っていった。

当然だが、中はイスラム教徒ばかりである。
入った所が中庭のようになっていて、真ん中に水がたまっている囲いがある。
後で知ったのだが、日本の神社にもあるようにここで体を清めてから入らなければならなかった。みんな手足などを洗っている。
なんにも知らないうへだゆふじは、そのままモスクの中に入っていった。

すると子供が走ってきて、何か言うのである。
分からない。なんとかそのジェスチャーで理解しようとしたところ、どうやら帽子をかぶれと言っているようである。
あ、思い出した、イスラムでは神聖な場所に入る時は頭を隠さねば。
すると、近くにいたじいさんが、「わしのを使え」と、イスラム教徒が皆かぶっている白の小さな帽子を渡してくれた。

時間的にちょうどお祈りが始まるようだ。
みんな中に入ってきて並び始めた。
ついでにうへだゆふじも並んでみた。
何やら歌にも似たような、コーランを読む声がマイクから流れ、一斉にみんな同じポーズをし、地面にひれ伏してお祈りをする。
うへだゆふじも周りと同じように祈ってみた。

時々まごまごしていると、となりのおっさんが教えてくれる。
どう見てもイスラム教徒ではない、旅行者に過ぎない日本人を、好奇の目で見ることもなく受け入れてくれるのである。
イスラム教、あるいは宗教というとどうしても暴動やテロ、戦争をイメージする人が多いかもしれないが、案外、寛容なのが本当の宗教かもしれない。

ちなみにうへだゆふじはこの旅行中、「お前の宗教はなんだ?」と聞かれると、「仏教」と答えていた。
そして首からはキリスト教のロザリオを下げ、イスラム教寺院に入り、ヒンズー教の聖地を訪れる・・・。
全く節操のない日本人の権化のようだが、ま、本来どの宗教も行き着く所は一緒、各宗教はその入り口であって、たまたま人によって違うだけ?などと思っていて、それぞれどんな入り口なのかと、ありとあらゆる寺院を見てみるつもりであった。

しかし、このイスラムのお祈りの一体感はなんやろ・・。
全員がひれ伏した時に訪れる静寂、なぜか懐かしさを感じるコーランを読む声、そして何やら大きなものに包まれているような感覚・・・。
うーむ、こんなのを1日に何回も経験してたら、同志意識も芽生えるねぇ・・。
他の宗教の人間から、同志の事をバカにされたり汚されたりしたら、怒る気持ちも分かるなぁ・・・、と感じていた。

無事お祈りを終え、帽子を返し、外に出ようとすると、隣で祈り方を教えてくれていたおっさんに呼び止められた。
日本やインドのこと、またイスラムについては日本で見ることは稀だということなどを話した。
するとこのおっさん、気に入ってくれたのか、時間があるならウチへ来ないかと言う。
いやいやしかし、今夜中に次の目的地に向かって電車に乗らなければならず、それより何より、友達が病気で寝ている、もう帰らなくては、などと話すと、出ました、どうも怪しい身の上話・・・。

息子が2人そばにいたのだが、おっさん曰く、この次男坊が実は心臓が悪い、手術するには大金がかかる、大変だ、我々には金がない、などと言いながら、そのおっさん、帰って仕事に行こうとするでもなく、どっかと座ったままなのである。
そして、「ウチに飯食いに来ないか?」
文脈がバラバラである。
絶対に金をせびられることは間違いない。
と言うより、もうせびられている。

帰らなくてはならない、タクシーも待たせてあるからと、なんとか断りジャマー・マスジットを後にした。
いやいや、何が善意で何が悪意やら・・・。

しかしあの次男坊、なんかほんまに心臓悪そうやったなぁ・・・。
かなりひ弱そうで人相も悪かったしなぁ・・・。
そして外に出ると、あの三輪タクシーの運転手が、・・・待ってなかった。
他に客を見つけて乗っけてったのかもしれない。
結局料金を払わなかった。ラッキ。

そのまま別のタクシーを拾い、ファテープル・スィークリーという、アクバル帝の城跡へと向かった。
ところがここで、うへだゆふじの体調が豹変するのである!

体中の節々が痛くなり、力が入らない。
どうも熱っぽい。

やばい、カゼでもひいたか、そう思い、KSのためにフルーツを買い、早々とゲストハウスへと戻った。
その頃には腹痛がし、吐き気をもよおし、かなり苦しい状態になっていた。
トイレにかけこむと下痢、そのままKSと同様、ベッドでうずくまってしまったのである。

KSも依然吐き続けている。
あたった。これは完全にあたった。食中毒や。
あのフライドライスが原因に違いない。
あの、生ゴミのようなにおいのフライドライス。
本当は午前中にこの宿をチェックアウトしなければならなかったのだが、夜の寝台列車に乗るまでの間、寝かせてもらうことにした。

うーむ、インドらしくなってきたな・・・。
厳しい状態ながらも、そんなことを考えながら眠りについた・・・。

次回、バラナシ(ベナレス)編へと続く・・・。
プリンタ出力用画面
友達に伝える

前のページ
タージ! タージタージ!!
コンテンツのトップ 次のページ
無駄なチャレンジ